◆今回の注目NEWS◆

◎ヤフー、国税庁とネット公売を実施、見積合計約6000万円・623点を出品(asahi.com、5月10日)
http://www.asahi.com/digital/bcnnews/BCN200705100016.html

【ニュースの概要】国税庁は税滞納者から差し押さえた物件について、ヤフーの「官公庁オークションサイト」を利用してインターネット公売を始めた。今回の出品点数は623点。見積合計は約6000万円となる。


◆このNEWSのツボ◆

 国税庁が差し押さえ物件などのインターネット公売を開始した(公売参加申込期間は5月30日まで)。2004年夏に東京都とヤフーが共同で開発したシステムを用いて、差し押さえ物件の公売を行って以来、地方自治体では公売物件の販売にインターネットオークションを活用する事例が広がっていたが、国としては初めての試みである。

 国でのインターネットオークションの活用が遅れていたのは、国税徴収法により、入札参加者に現金による保証金の前払いが求められていたため。今回、法改正により保証金のネット決済が可能になり、ようやくネット利用が実現したものである。一般のインターネットオークションに比べると、まだまだ複雑ではあるが、それでも従来の通常入札方式に比べれば、参加の利便性は大きく高まったといえるだろう。

《参考》東京都のインターネット公売の仕組み(国税庁の場合も基本的にはこれと同様の形となる)
http://www.tax.metro.tokyo.jp/oshirase/2004/20040714c.htm

 少し興味本位な話になってしまうが、実際の官公庁オークションのサイトを眺めると、「へぇ!!こんなものが…」とうなるようなものが随分と出品されている。各種の報道では、5カラットのダイヤなどが話題になったようであるが、それ以外にも天皇陛下御即位大礼記念メダルであるとか、東京オリンピックでの銀メダル、銅メダルまで出品されている。一体どういった経路をたどって、これらのメダルが国税庁に行き着いたのか…と考えると、少し複雑な気持ちにもなる。

 いずれにせよ、こうしたインターネットの利用は、今後ますます進むであろうし、近いうちに不動産の公売も始まるようである。官公庁関係の中では最も人気を集めるサイトの一つになることは間違いないだろう。

 しかし、少し皮肉なのは、あれほど「電子政府」が喧伝され、様々なプロジェクトが実施されたにもかかわらず、利用ランキングがあればきっとトップを争うであろうサービスが、民間によって提供されているということではないか。やはり、「使ってもらう」ために激しい競争を戦っている、「民の知恵と力」を活用することの効果は大きいということの実証例…ということだろうか。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。