写真:ThinkPad T61
写真:ThinkPad T61
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 筆者はここ数週間ほど,米Intelの最新モバイル・プラットフォームを搭載した中国Lenovoの最新「ThinkPad」を試用している。「ThinkPad T61」は,筆者がこれまで見た中で最強のWindows Vista搭載ノート・パソコンだ。「Santa Rosa」(開発コード名)と呼ばれる最新プラットフォームは,Windows Vistaの機能を想定したものであり,「本物」のWindows Vistaパソコンが登場したと言えるだろう。

 Santa Rosaは,2つのニックネームで市場に投入された。メインストリームのノートPCが対象である「Centrino Duo」と,エンタープライズ市場が対象の「Centrino Pro」である(紛らわしいことに,Intelは前世代のCentrinoプラットフォームにも,Centrino Duoという名前を使っていた)。どちらのシステムも高速のCore 2 Duoプロセッサを搭載している。動作周波数は最大2.4GHzで,2次キャッシュの容量は何と最大4Mバイトだ。どちらも,新しいNVIDIA統合グラフィックス機能やオプションの専用グラフィックス機能をサポートしている。そしてどちらも,IEEE802.11a/b/gとギガビット・イーサネットに加えて,最新のIEEE802.11nワイヤレス・ネットワーキングをサポートしている。

vPro由来のシステム管理機能も搭載

 Centrino Proには,Intelのデスクトップ・システム向けの技術「vPro」にも搭載されている2つの機能が追加されている。つまり,Centrino Proには,Trusted Platform Module(TPM)ベースのセキュリティ機能と,「Active Management Technology」と呼ばれる資産管理機能とリモート診断機能が含まれているのだ。これらはどちらも,ノートPCのOSの外側で作動する。

 十分なメイン・メモリーが搭載されているなら,新しいグラフィックス・ハードウエアを搭載するハイエンドのノートPCならどれでも,Windows Vistaをかなりの速度で実行できるだろう(筆者の経験から言えば,2Gバイトが新しい出発点だ)。だが過去のモバイル・プラットフォームと比較して,Centrino DuoとProが明らかに勝っているのは,「Robson」という開発コード名だった「Turbo Memory」と呼ばれる新しい機能の存在である。このオプションのキャッシュ機能は,システムのマザーボードに最大2Gバイトのフラッシュ・メモリーを追加するものだ。これによって,よく使われるアプリケーションやOSコンポーネントをハードディスクではなくフラッシュ・メモリーから読み出せるようになるので,パフォーマンスは向上し,バッテリーの寿命は長くなる。

 Centrino DuoとProはどちらも,強化された電源管理機能を備えているので,これによってもバッテリーの寿命は延びるだろう。アイドル状態にあるときの電力使用を減らす「Enhanced Sleepモード」を搭載しているからだ。さらに,フロントサイド・バスは様々な速度をサポートしており,必要のないときは低電力モードに切り替わる。

低速ディスクのパフォーマンスを向上

 さて,ここまではすべてスペック上の話だ。実際のところ,Santa Rosaはどれほどのものなのだろうか。

 筆者が試しているThinkPad T61は,14インチ・ワイド・ディスプレイを搭載したハイエンド機で,すぐに筆者のお気に入りのコンピューティング・システムとなった。ThinkPad T61は,Centrino Proの新機能を効果的に統合している。Turbo Memory用に1Gバイトのフラッシュ・メモリーを搭載しており,5400回転/分のハードディスク・ドライブのパフォーマンスを向上させている。Lenovoが筆者に語ってくれたところによると,この組み合わせのパフォーマンスは,フラッシュ・メモリーを搭載しない7200回転/分のドライブよりも,実際に優れているそうだ。筆者はWindows Vistaのディスク暗号化機能である「BitLocker」のパフォーマンスには感心しなかったが,それはWindows Vistaの問題であって,ThinkPadに非はない。BitLockerについては,今後の記事で取り上げてみたい。

 Lenovoは,既に地球上で最も優れたノートPCだったThinkPadの水準をさらに引き上げる,ユニークな機能をたくさん追加して,この新しいThinkPadをより魅力的なものにしている。同システムは新たに,前世代のTシリーズで登場したマグネシウム・ベースと調和する,マグネシウム合金の「ロール・ケージ(訳注:過酷な耐久性と安全性が求められるレースやラリーで,万一の事故からドライバーを守ったり,ボディーの剛性をアップしたりする骨組みのこと)」フレームを採用している。これによって,フレームはより薄く,より強度の強いものになっている。

 ThinkPad T61のキーボードは防滴型だ。落下によって生じるハードディスクの書き込みエラーを防止するアクティブ・プロテクションも搭載している。ThinkPad T61は,これまでに作られた最も薄いThinkPadでありながら,最も静音性に優れたThinkPadでもある。さらに,「BatteryStretch」というアプレットが水面下で活躍しており,バッテリー・メーターが十分な残量がないことを示している場合でも,例えばDVDの映画を最後まで見られるようにしてくれる。同アプレットには,必要なバッテリー寿命が得られるまで,重要でないシステムをシャットダウンする働きがあるのだ。

 さすがにThinkPadというだけあって,ThinkPad T61のキーボードは筆者がこれまでに見たノートPCのなかでも最高のもので,統合された指紋読み取り装置や,期待通りに素晴らしいLenovoの管理アプレットなどが搭載されている。さらにLenovoは競合他社に遅れをとらないように,いくつかのうれしい変更も加えている。ThinkPad T61には,4-in-1のメディア・リーダーや統合されたビデオ・カメラ,そしてBlu-rayディスク・ドライブまでもが搭載されているのだ。ビジネス向けのノートブックでは珍しい,FireWireポートまでもが用意されている。

 2Gバイトのメモリーを搭載したときのWindows Vistaのパフォーマンスは,驚くほど素晴らしかった。筆者はThinkPad T61が,ノートPCの傑作ではないかと考えている。