岩井 孝夫
佐藤 三智子

 情報システムの形態には集中処理と分散処理があり,それぞれメリットとデメリットがある。集中と分散の双方があることを理解した上で,最も効果を上げる手段を多角的にどうとるかを決定する必要がある。

集中/分散の壁 (3)
集中システムに現場から不満の声

 製造業のC社はこのほど,会計システムを再構築した。新会計システムの特徴は,月次決算をはじめ資金繰り予測,業績分析表(金額・数量),製造原価,物流費用分析,在庫状況にいたる豊富な管理資料を当月第1週に作成できる点にあった。

 しかも,請求書や各種の伝票といった基本のデータはすべて一つの会計データベースに蓄えるようになっており,必要に応じてこのデータベースを各部門から自由に検索・分析できるようにした。

 各部門でさまざまな管理資料を作成させ,社員に会社の現状を把握してもらい経営マインドを育成することが狙いだった。その代わり現場で全ての伝票を入力してもらう必要があった。

 従来の会計システムは,地域別に分散配置された部門システムから,売上・支払・原価情報・在庫情報を集計してきて,月次決算を行う財務会計主体のシステムであった。

 新会計システムが動き出して半年が経過し,C社のシステム室長はユーザーの声を聞いて回った。システム室長は,評判は良いはずだと期待していたが,多くの現場の声は「新システムは我々の役にまったく立っていない。我々はデータ入力作業を強いられているだけだ」というものであった。意外な社内部署の反発に驚いたシステム室長は,原因究明に躍起になっている。
管理はやはり集中が基本

 A社のケースではオフコンの運用を分散させることを決定したときに,コード体系の管理や基幹系システムの内容変更のルール,標準ドキュメントの整備・管理といった事柄については,経理部が一元管理することを徹底しておくべきだった。ここをあいまいにしたことが問題の根元にあった。

 A社のシステム担当者は社長に依頼し,幹部会で「経理部が情報システムの担当部門である」「システムに関するりん議書は必ず,経理部を経由して上げる」ことを徹底してもらった。その上で現在,コード体系の整備や各種のセキュリティ基準の制定などを外部コンサルタントの力を借りながら地道に進めている。

 B社もA社と同様に,分散化を実施する際に,「情報管理基準」や「ドキュメント整理標準」「情報システム保全基準」「情報システム関連手続規程」などの整備を怠っていた。

 B社のシステム課長もコンサルタントのアドバイスを受けながら,各部署の責任者に対し,社内の情報システムの混乱状況とこの状況を放置しておくと発生するであろう問題点について説明した。その上で,すでに使用しているソフトに関しては正式に購入させた。そして今まで使用していたソフトをいったん削除してから,再度インストールするようにした。

 LANについてはセキュリティ基準をきっちり定めた。全社のLANは安全であると商品開発部に納得してもらい,商品開発部のMacも全社LANに接続することにした。B社のシステム課長は今後,情報の取扱基準やドキュメントの整備に着手する予定である。