Q 最近目が疲れて,パソコンに向かう作業が苦痛です。ひどくなると,目から後頭部にかけて強い痛みが起こり,吐き気がすることもあります。近視なのでコンタクトレンズを使っています。 (25歳,女,SE)

 「ドライアイ」の可能性があります。目を健康な状態に保つには,涙が十分に出て,黒目,白目ともに表面の細胞が涙で覆われていることが必要です。ところが,涙が少なくなると,目の表面の細胞が乾燥して剥げ落ちてしまいます。この状態がドライアイです。これがひどくなると,頭痛や吐き気などの症状が出てきます。

 パソコンを使った作業を続けていると,涙の量が減ってドライアイになりやすくなります。これは,目の細胞に涙を供給する働きをしているまばたきの回数が減るからです。普段,人間は1分間に20回程度まばたきをしていますが,ディスプレイの画面を注視していると,目が緊張してしまい,まばたきの回数が半分以下に減ってしまうのです。

 ディスプレイを見ていると無意識のうちに目を見開いてしまうので,涙の蒸発量がいつもより増えます。これも涙の量が減る理由の1つです。コンタクトレンズを装着している場合は,角膜(黒目の部分)の知覚神経が麻痺して涙が出にくくなるので,さらに涙の量が減ってしまいます。

 パソコン作業から逃れられないITエンジニアが,ドライアイになるのを予防するにはどうすればよいのでしょう。それには,パソコンに向かう作業の仕方を工夫することが,最も重要です。

 具体的には,連続作業時間を1時間以上にしない,作業と作業の間にはなるべく10~15分のブレイクを入れる,作業中は意識して何度も画面から目を離して5メートル以上離れたところを見るようにする,目を見開かないように画面を少し見下ろす姿勢で作業をする,といったことを必ず守るようにしてください。決して難しいことではないはずです。

 部屋の空気が乾いていると涙が蒸発しやすくなるので,部屋の湿度を保つことも大事なポイント。特に,直接エアコンの風が吹きつける場所は乾燥しやすくなるので,こうした場所では作業しないよう注意が必要でしょう。

 ドライアイ対策には,目薬も有効です。成分が「人工涙液」のみで,できれば防腐剤の入っていない「使いきりタイプ」のものを勧めます。このタイプの目薬であれば,長期間使っても全く問題ありません。

 目の充血を取るために「血管収縮剤」が入った目薬もありますが,これを連続して使用するのは望ましくありません。

 目薬の正しいさし方についても触れておきましょう。下瞼を引いて上を向き,あごを上げ気味にして,目の表面から少し離して一滴だけさすのです。量としては一滴で十分効果があります。命中させるコツは,目薬の先端を見ることです。

 パソコンを使った長時間作業は,作業者の健康に大きな影響を与えることが知られています。パソコンが健康に及ぼす影響について疑問に思うことがあれば,産業医,保健師,衛生管理者など,企業内産業保健スタッフにぜひ相談してください。

河野慶三 富士ゼロックス全社産業医
1970年,名古屋大学医学部卒。厚生省,熊本県公害部首席医療審議員,労働省主任中央じん肺診査医,産業医科大学助教授,自治医科大学助教授を経て, 94年に富士ゼロックス本社産業医に就任。98年から全社産業医。著書に「働く人の健康管理」(労働新聞社)など。医学博士