JavaOneは毎年時期は異なるものの,場所は常にサンフランシスコのモスコーニセンタで開催されます。このため,複数年JavaOneに通っていると,サンフランシスコの街の変化を感じることができます。
モスコーニセンタがあるSOMA(South of Market)地区はもともと治安の悪い地域でした。それが再開発により生まれ変わりつつあります。モスコーニセンタも再開発により建築されたコンベンションセンタです。
10年前,筆者がJavaOneに初参加したときは,治安がいいとはとうていいえませんでした。しかし,今では夜中に女性が1人でも歩ける街になっています(とはいっても1人歩きをお勧めしているわけではありませんが)。
SOMAではいまだに建設ラッシュが続いています。昨年から今年にかけてWestfield San Francisco Centreというショッピングモール(図1)ができ,Courtyard Marriott(図2),St. Regisなどの新しいホテルも続々とオープンしています。
従来の繁華街であったUnion Square近辺も新旧の入れ替わりが激しくなっているようです。おもちゃ屋の老舗であったFAO SchwarzがあったビルはBarneys New Yorkになるようですし,安いステーキで有名だったTad's Steakも倒産してしまいました(図3)。新しいものがすべていいというわけではありませんが,新旧の入れ替わりにより街に新しい風が吹いてきたのは確かなようです。
さて,そんな周りの活気に触発されたのか,今年のJavaOneもとても活気がありました。
中でも最もホットだったのが今週ご紹介するJavaFXです。
今週はその活気を伝えられればと思い,前半を今年のJavaOneの紹介,後半をJavaFXの解説という2部構成にしました。JavaOneの様子なんてどうでもいいという方は,前半をすっ飛ばしてJavaFXの章に進んでください。
それでは,モスコーニセンタに行ってみましょう。
2007年のJavaOne
モスコーニセンタはサンフランシスコの3rd Streetと4th Streetの間,Howard Streetをはさんで北側がモスコーニノース,南側がモスコーニサウスという二つの建物から構成されています(図4~7)。とはいうものの,建物のほとんどの部分が地下にあり,ノースとサウスは地下でつながっています。
地上はどうなっているかというと,Yerba Buenaという公園になっています(図8)。
また,少し離れたところにモスコーニウェストもあるのですが,こちらはJavaOneでは使われていません。
JavaOneに登録した後に,毎年話題になるのが,今年のJavaOneバッグはどうかということです。JavaOneに参加するとバッグをもらえるのですが,デザインが以前と比べてどうかというのが,参加者には気になるところです。今年のバッグは図9のように少しおとなしめのデザインでした。
JavaOne会期中はこのバッグを背負った人たちがサンフランシスコのダウンタウンを集団移動していくのです。
図4 モスコーニセンタの近くにはJavaOneの旗が | 図5 道の左側がノース,右側がサウス |
---|---|
図6 モスコーニノース | 図7 モスコーニサウス |
図8 Yerba Buena公園 | 図9 JavaOneバッグ |
今年からJavaOneの前日にCommunityOneというイベントが開催されるようになりました(図10)。
昨年まではNetBeans DayがJavaOneの前日に開催されていましたが,今年はNetBeansに加え,GlassFish,OpenJDK,OpenSolarisなどのオープンソース・プロジェクトを取りまとめてCommunityOneとなったようです。
基調講演にJonathan SchwaltzやRich Green,クロージング・セッションにJames Goslingが登壇していることからも,米Sun Microsystemsがオープンソースに力を入れていることがわかります。
筆者もCommunityOneに参加していたのですが,偶然にも稚内北星学園大学の丸山不二夫先生と元Servletのスペック・リードである吉田豊氏にお会いしました(図11)。吉田氏は米国に在住していることもあり,このようなイベントでないとなかなかお会いできません。人と人との出会いだけでもJavaOneに参加した意義があると筆者は思っています。
さて,今年のJavaOneですが,例年に増して人が多いように感じます。どこにいっても人,人,人。セッションだけでなく,ランチ会場やパビリオンなど,どこでも長蛇の列ができています。
さて,ここでクイズです。下の四つの写真(図12~15)はすべて人ごみや行列を写しています。それぞれどういう場面でしょうか。
それでは,正解です。
セッション
まずは図12のその1ですが,これはセッションに入るための行列です。人が増えたことも行列が長くなる要因なのですが,昨年から行われているセッション登録制度も行列が長くなる原因になっています。
JavaOneのWebページの左サイドバーにはSchedule Builderというリンクがあります。ここで聴講したいセッションを事前に登録しなければなりません。図16は私のSchedule Builderのスクリーンショットです。セッションを聴講するとAttendedと表示されます。
JavaOneの参加証は非接触式のJavaCardになっています。これを用いて,セッションの入口で登録してあるかどうかをチェックするのです(図17)。このチェック作業に時間がかかるため,なおさら行列が伸びてしまうわけです。図17を拡大するとディスプレイに私の名前が緑で表示されていることがわかります。登録していないとここが黄色になってしまい入ることができません。
登録していなかったけれど,どうしても聴講したくなったらどうするか。そのときはウエイティング・ラインに並びます。正規登録者が会場に入った後,運よく空席があればウエイティング・ラインの人たちも入ることができます。
とはいうものの,人気のあるセッションはすぐに満席になってしまいます。人気のあるセッションはアンコール・セッションが設けられることがあるので,毎朝のSchedule Builderチェックは欠かせません。
ただし,登録が必要なのは昼間のセッションだけです。BOFは登録しなくても入れます。
セッション会場で私が毎年すごいと思うのは,耳の不自由な方たちのために手話のサービスがあることです。こうした配慮は米国ならではでしょう。
食事事情
図13のその2はランチ会場に群がる人です。図13は初日のランチ会場の入口の様子です。ランチ会場はモスコーニサウスにあるのですが,ランチ会場に入るための行列は地下通路をずっとのびてモスコーニノースまで達していました。
JavaOneでは,参加者が会場で朝食とランチを食べることができます。朝食はマフィンやペストリーなどとフルーツ。ランチはランチボックスかホットエントリーという日替わりの料理になります。図18が朝食ですが,朝から甘いものなど食べられるかという人たちは多いみたいですね。
図19が2日目のホットエントリーのラザニアです。誰が調理しているのかまでちゃんと表示してあります(図20)。また,デザートとしてケーキも付いてきます(図21)。このケーキがいかにもアメリカのケーキでとても甘い。日本からの参加者はのきなみ残していました。
ランチ会場に来るのはJavaOne参加者の半数くらいだとして,それでも1万人近くに達してしまうため,広大な場所を確保してあります(図22)。料理をサーブする台もずらっと並んでいるのですが,それでもやっぱり長蛇の列ができてしまいます(図23,24)。
5月10日の夜はこのランチ会場を使用してAfter Dark Bushというパーティが行われました。パーティ会場ではライブやセグウェイ試乗なども行われました。図25はThe Rolling Stonesのそっくりさんバンドのライブです。
図18 朝食 | 図19 ランチのラザニア |
---|---|
図20 ラザニアの紹介 | 図21 ランチのデザート |
図22 ランチ会場 | 図23 台がずらっと並ぶ |
図24 こんな風にサーブしてくれます | 図25 After Dark Bush |
パビリオン
JavaOneではセッションとは別にパビリオンと呼ばれる展示会場もあります。
初期のJavaOneではスタートアップ・カンパニーが多くあり,それこそ幅1メートルぐらいのブースでひしめき合っていました。今では「見るからにスタートアップ・カンパニー」というものは減ってきています。それでも,探せばいろいろとおもしろいものが発掘できるようです。
例年,JavaOneの初日にはパビリオン・レセプションというパーティが開催されます。図14の行列はパーティで料理をサーブしてもらうための列でした。図26のように肉をその場でカットしてサーブしてくれるのですが,そこに100人以上の人たちが並んでいるのです。
筆者はこの列を見ただけでおそれをなして,並ぶのをあきらめました。
今年はJavaを使ったデバイスの展示が目立ちました。Javaで制御している潜水艦(図27)や,レーザーによる地表の走査をJavaで行うPerrone Roboticsのヘリコプター(図28)などが展示されています。ABBの産業用のロボットも展示されていました(図29)。このロボットにはペンが装着されており,似顔絵を描いてくれます。
また,今年もスロットカーを制御するプログラム・コンテスト(図30)や,2足歩行ロボットの制御を行うプログラム・コンテスト(図31)が開催されていました。このロボットはWow Wee社のホビーロボットで,会場で実際に販売されていました。大きさがもっと小さければ,筆者も購入したのですが。
会場の隅には,何やら黒い物体がありました(図32,33)。そう,これこそがコンテナをそのままデータ・センターにしてしまったProject Blackboxです。実際に中に入ることもできます(図34)。
さて,パビリオンではプロダクトや技術を実際に開発しているエンジニアと会うことができます。ここでは,その代表としてProject Looking Glassを率いる川原英哉氏に登場していただきます(図35)。今年はProject Looking Glass上で動作するProject Wonderlandのデモを行っていました(図36)。
そのほかにもJRubyを開発しているCharles Nutter氏や,JavaFXのChris Oliver氏もパビリオンで説明していました。
パビリオンには毎年恒例のマッサージ屋も出店しています(図37)。こんなところでマッサージを受ける人がいるのだろうかと毎年思うのですが,それなりにいるようです。
図26 肉をカットしてくれます | 図27 潜水艦 |
---|---|
図28 ヘリコプター | 図29 産業用ロボット |
図30 スロットカーレーシング | 図31 WowWeeのロボット |
図32 Project Blackbox | 図33 Project Blackbox |
図34 Blackboxの内部 | 図35 川原英哉氏 |
図36 Project Wonderland | 図37 マッサージも受けられる |
ジェネラル・セッション
さて,クイズの最後の答え(図15)はジェネラル・セッション(基調講演)にならぶ行列です。
ジェネラル・セッションはランチ会場よりも広大なホールで行われます(図38)。セッションが始まる前にはライブが行われます。図39は初日のジェネラル・セッションで演奏していたDJ Annaです。
最終日には日本の和太鼓によるパフォーマンスが行われました。
このパフォーマンスは太鼓道場によるものです。2001年のJavaOneでも太鼓道場によるパフォーマンスがありました。このときに比べると,今回のパフォーマンスはずいぶんアメリカナイズされしまったように感じるのは筆者だけではないようです。比較のために古い写真を引っぱり出してみました。左が今年,右側が2001年のパフォーマンスです(図40)。
ジェネラル・セッションの司会は例年通りJohn Gage氏です(図41)。初日のスピーカーはRich Green氏(図42)。
セッションの中ではいくつかのアナウンスがあったのですが,最も話題になったのが,今週ご紹介するJavaFXでした。