エフピコ 代表取締役副社長 佐藤 守正氏

 2003年6月に稼働させたSCMシステムは、当社にとって欠かせない武器だ。というのも当社の主力事業は、コンビニエンス・ストアの弁当などで使われている発泡スチロール製トレー(簡易食品容器)の製造・販売。薄利多売のビジネスであり、販売機会を読み間違うと業績悪化に直結してしまう。

 SCMシステムで、需要予測や生産計画、配送計画を週次で立案し、約8000アイテムの商品について、在庫の最適化を進めることで販売機会を逃さずにすむ。増収増益を続けられるのも、SCMシステムがあってこそだ。

 導入効果に手応えをつかんだ今だから言えるが、SCMシステムが安定し、会社に根付いたと感じるまで、1年半ほどかかった。2003年6月の稼働直後は現場が大混乱。アスペンテックのパッケージ「ASPEN MIMI」で構築したのだが、バグもあったし、新しい業務に不慣れな担当者がデータ入力でミスを犯すなどして、全国各地で欠品を起こしてしまった。

 その後、バグの修整やデータ入力方法の見直しなどを進め、数カ月でシステムは正常に動くようになった。ところがまたトラブルに見舞われ、同じ年の12月には欠品から一転して過剰在庫に陥った。

 理由は前回とはまるで違う。SCMシステムに対する現場の不信感が、想像していたよりも大きかったことだ。営業担当者の多くが欠品による機会損失を恐れ、あらかじめ需要予測データを多めに入力するようになっていた。ある商品については、100ケースで十分なところを500ケースと予測していた場合さえあった。その後しばらくは、減産しながら在庫を調整するしかなかった。現場に負担を強いたわけで、私としてもつらかった。

 新しくSCMシステムを導入したことでビジネスに支障が出たため、社内から厳しい指摘を受けることもあった。他の役員や現場から、「従来のシステムに戻すべきだ」との声も出たし、プロジェクトマネジメントやテストが甘かったと指摘されたのも事実だ。

 こうしたときに言い訳すべきでないというのが私の信念。ビジネスは結果がすべてだからだ。システムが経営インフラとして根付くまで粘るしかない。

 特に当時はSCMシステム構築プロジェクトの担当役員だったため、厳しい立場に置かれたが、後戻りなどできないし、そうするつもりもなかった。社内や外部のITベンダーのプロジェクト・メンバーも同じで、とにかく前を向くことだけを考えていた。

 気持ちを維持できたのは、私やプロジェクト・メンバーが「ビジネスに不可欠なシステムを構築しているんだ」との誇りを持っていたからだ。(談)

写真=厚川 千恵子