伊藤忠商事の執行役員である石丸慎太郎IT企画部長
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 現在、総合商社のいずれもが同じ課題に挑んでいる。それは、従来強かった事業部門ごとの縦割り組織に、全社的な横串を通す取り組みだ。伊藤忠商事も例外ではない。現在同社は「ITOCHU DNA」(Designing New Age)と呼ばれる全社員参加の業務改革プロジェクトにまい進している。「業務の可視化・効率化による現場力の強化」「将来の伊藤忠の姿を見据えたグループ連結経営の強化」が主な目的だ。

 業務改革と同時にIT(情報技術)による横串も意識している。執行役員の石丸慎太郎IT企画部長は「この10年、(商流の)川上から川下まで、BtoBから生活関連までと商材の範囲は広がっている。点ではなく面のストラテジーが求められるようになった」と縦割り組織の限界を説明する。食品や繊維など7つのカンパニーがそれぞれの強みを生かしながらも総合力を発揮する環境作りが理想だという。

 「IT部門に10年、それを使う側にも10年いた。両方を知る強みを持っている。システムを導入する前に業務プロセスをしっかりと分析することをやっていきたい」と石丸部長は話す。昨年、ユーザー部門と本社のIT企画部の両方を経験させてITと業務両方を精通する人材を育てていく方針を打ち出し、人材育成計画「キャリア・ディベロップメント・プラン(CDP)」も発表。

 その中で、必要なIT人材を3種類に定義した。プロジェクトマネジメント全体を指揮する「ITストラテジスト」、要件定義などを受け持つ「ITプロデューサー」、インフラやネットワークの整備を担当する「ITアーキテクト」の3つだ。それぞれに必要な知識やスキルも明確にした。今後はCDPに沿った計画から伊藤忠を引っ張るIT人材が生まれてくることになるだろう。

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◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・使う言葉が専門的になうえに、コンセプチュアルになりがちだ。経営層の立場にとって分かりやすい説明を心がけている。

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・米国に8年滞在していたので、日米のベンダーの差を感じる。ある程度は仕方のないことだが、日本のベンダーは仕事と人が一体になっていないのではないか。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
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◆最近読んだお勧めの本
・『ローマ人の物語』(塩野七生、新潮社)のシリーズ最終巻「ローマ世界の終焉」

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
ウィキペディア 分からないことは分からないままにされているところが面白い。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー・学会など
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◆ストレス解消法
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