十、退職者 脅し取られる 機密かな

 企業の重要情報が漏洩する原因として、見落とされがちなのは、退職者です。退職者が悪意の第三者から脅され、機密情報や個人情報を古巣から奪取することがあるのです。
 在職中、どれほど品行方正な社員であったとしても、社外の人間関係の中には危険が一杯潜んでいます。そもそも在職中であっても、外部の脅威にさらされた社員が、会社の重要情報を「脅し取られる」危険(リスク)があるのです。退職者と在職員、あるいは社員同士が共謀し、機密を持ち出すこともありえます。
 このように機密を「脅し取られる」リスクは、会社の内外にあるわけです。退職者のIDとパスワードが、会社を辞めてからも使えてしまう会社は、ダメな会社と言わざるを得ません。複数人でIDとパスワードを共有している会社も、危険度が高いことになります。また、企業は、退職者の再就職の状況を把握しておくことも重要です。就職が決まらなければ、元の会社に悪意を持ちやすくなるものです。
 経営トップや役員は、会社のトップシークレットを知る立場です。自分自身の機密管理を徹底するとともに、社内のIT利用の管理を徹底させることが必要です。


(文・森岡 謙仁=経営・情報システムアドバイザー、
アーステミア有限会社代表取締役社長)