Webページのコンテンツ管理システム「Wiki(ウィキ)」を利用する企業が増えている。情報共有の容易さを認め、日本テトラパックや三菱東京UFJ銀行などが社内利用を開始。アクセス権限の設定などの機能を盛り込んだ企業向けWikiも新たに登場してきた。

日経コンピュータ2006年8月21日号の記事を原則としてそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいているため、社名や登場人物の肩書きを含め現在は状況が変わっている可能性がありますが、SaaSやEnterprise2.0の動向に興味のある方に有益な情報であることは変わりません。

 「コンテンツの編集・更新が簡単で誰でも使える。先行して導入したデザイン部門では、商品のデザインや製版などの業務知識やノウハウ、業務手順に、業務通知、システムの使い方までWikiに蓄積しており、業務で必要な情報の8割程度を管理している」。

 飲料用紙パックの製造を手掛ける日本テトラパックのピーター・プレム製造本部デザイン&プリプレス部マネージャーは、こう話す。同社は2006年7月から、400人の全社員の2割が勤務する製造部門で、情報共有のためにWikiを利用し始めた。

 三菱東京UFJ銀行もWikiに目をつけた。同社のシステム部とシステム子会社でIT関連の技術情報を共有するツールとしてWikiを採用し、3500人が8月中に利用を始める。ほかにもヤフーやリクルート、富士通などが社内の情報共有の一部に活用している。

 Wikiは、Webブラウザで編集・更新ができるコンテンツ管理システムだ。一つのページを複数のユーザーが書き換えて、コンテンツを充実させていく。ページの編集が容易なだけでなく、過去の更新履歴や差分を残せるのが特徴である。代表的な利用例に、インターネット上にあるフリーの百科事典「Wikipedia」がある。

 Wikiには派生製品が多数存在し、その多くは無料だ。これまでも、大学の研究室やシステム開発現場の情報共有ツールとして使われることはあった。

 企業での利用が増えてきた理由について、06年06月に企業向けWikiを発売したライトアップの阿部賢悟取締役は、「昨年からのWeb2.0ブームでWikiの認知が広がり、便利さを体験したユーザーが増えた。ブログの導入を検討した結果、Wikiに行き着くケースも多い」と指摘する。

 「ブログは個人が時系列に情報を書き込むものだ。これに対してWikiは、文書を作成するだけでなく、複数のユーザーが参加して、内容を更新して充実させていくことを前提としている。共同作業に向いているのはWikiだ。このことに企業が気付き始めた」(阿部取締役)。

 ニーズの高まりを受け、企業向けWikiも増えてきた()。06年内にはマイクロソフトが、同社の企業ポータル作成ソフトの新版「SharePoint Server 2007」にWikiを盛り込む。同社の昇塚淑子IWソリューションマーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャは、「Wikiは情報を書き込みやすく見やすい。簡易な情報共有に有効だと考えて、取り込むことにした」と話す。

表●主な企業向けWiki、およびWikiを取り込んだ製品
表●主な企業向けWiki、およびWikiを取り込んだ製品

 マイクロソフトのほかに、06年5月末以降だけで、オーストラリアのアトラシアンが開発した「Confluence」、ライトアップの「Wuki」、レンタルサーバー事業などを展開するスターティアがRubyを使って開発した「Digit@Link CMS」などが、相次いで登場している。ConfluenceとWukiは、ユーザーやグループ単位で編集権限を設定するアクセス制御などの機能を備え、「誰が」「いつ」修正を加えたかが記録できる。日本テトラパックやヤフーはConfluenceを採用した。

 今後Wikiは、ブログとともに、企業の情報共有の一翼を担う存在になりそうだ。