金融商品取引法(いわゆる日本版SOX法,通称J-SOX)の適用が始まる2008年4月からの事業年度まで,あと10カ月あまり。上場企業による内部統制への取り組みも,“本番”に向けていよいよ本格化し始めた。

 こうした企業の取り組みは継続的に求められるものであり,長期にわたってIT市場に大きなインパクトを与えることが予想される。ここではIDC Japanと矢野経済研究所による市場調査の結果を紹介する。対象の市場はコンプライアンスとアウトソーシングである。サービスを受けるユーザー企業にとっても,サービスを提供するITベンダーにとっても,押さえておきたい市場の動向と言える。

2007年のコンプライアンス市場は5382億円,金融・運輸が牽引し2011年に1兆円超へ

 IDC Japanによれば、日本版SOX法対策やCSR(企業の社会的責任)活動などで利用するサーバー、ソフト、ITサービスなどのコンプライアンス市場は、2006年が2698億円だった。2007年は前年の約2倍に当たる5382億円の見込みだ(図1)。

 2008年以降も継続してCSR活動、企業価値向上策などでIT機器やサービスが利用されるという。なかでも、銀行や保険などの金融業界、運輸や通信などの業界が市場を牽引し、2011年には1兆3615億円にまで膨らむと予測する。

出典:日経コンピュータ 2007年4月30日号 74ページより。IDC Japanが3月27日発表。詳細は「国内コンプライアンス市場規模予測を発表」を参照

図1●国内コンプライアンス市場
(2006年実績、2007年見込み、2008年~2011年予測)

アウトソーシング市場が2兆円の大台超え,日本版SOX法の施行が追い風に

 矢野経済研究所によると、ITアウトソーシング・サービス市場が拡大し、2006年度は2兆44億円に達する(図2)。高成長の主要因は、日本版SOX法の施行に向け、内部統制強化策としてITアウトソーシング・サービスを利用する企業が増えたためと同社は分析する。

 ただし、08年度にはSOX法関連需要が一服するとも予測。代わりに、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が、市場拡大に大きく寄与するとみている。2010年度に、2兆6223億円に達すると見込む。

出典:日経コンピュータ 2007年3月5日号 66ページより。矢野経済研究所が1月31日発表。詳細は「ITアウトソーシングサービス市場に関する調査」を参照

図2●ITアウトソーシング・サービス市場規模の推移