基調講演の開始まで生演奏で出迎えてくれていた
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Ray Ozzie氏のスピーチ
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基調講演の様子
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基調講演最後のディスカッション
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Silverlightの紹介(1)
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Silverlightの紹介(2)
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Silverlight Streamingの紹介も
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モバイルフォンへの動画配信のデモンストレーション
モバイルフォンへの動画配信のデモンストレーション
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様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(1)。CSSの可能性を伝える取り組みだろう
様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(1)。CSSの可能性を伝える取り組みだろう
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様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(2)
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様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(3)
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様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(4)
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様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(5)
様々にカスタマイズされたMIX07のサイト(5)
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Windows Liveもトピックのひとつ
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ASP.NET AJAXに関する紹介も多かった
ASP.NET AJAXに関する紹介も多かった
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実際にVisual Studioを操作してコーディングを行うセッションが多かったのも印象的
実際にVisual Studioを操作してコーディングを行うセッションが多かったのも印象的
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 Microsoftは2007年4月30日から5月2日の3日間,同社のWeb関連戦略やテクノロジを発表するコンファレンス「Microsoft MIX07」を開催した。2年目(2回目)となる今年は,昨年以上に“Experience”の重要性を訴える内容であった。

2回目の開催となった「MIX07」

 今回もメイン会場は昨年同様,米国ラスベガスのVenetian Hotel&Casino。「MIX at PURE Nightclub」というレセプションのみ,Caesars PalaceのPURE Nightclubで行われた。ラスベガスでの開催というのも,Experienceということなのであろう。世界各国のエンジニアがExperienceのメッカに集まり,最新のテクノロジについてディスカッションできるというシチュエーションは素敵な感じだ。

 会場内の通路には,休憩時間やセッション中(?)のためのドリンクや軽食等が用意されているのだが,日本で行われるカンファレンスとは異なり,種類も質も大きさもまさに“Experience”。豊富に置かれていた手のひら程の大きさのクッキーは,まさに「アメリカ」を主張している。食事のことを気にかけなければならない日本のカンファレンスとは異なり,期間中は朝食・昼食が用意され,セッションで公開される内容に集中できるのも有難い。

 「Entertainment Lounges」と名付けられた休憩スペースでは,Xbox 360やUltra Mobile PCなどが体験できるようになっていた。単純に休憩スペースでのエンタテインメントと取ることもできるが,2日目の基調講演で「すべてのエンタテインメントは強固につながっていく」と触れていたこともあり,筆者は「活躍の場はPCだけ?」とMicrosoftが問いかけているように感じた。

 レジストレーションは前日の29日夕方に開始された。レジスレーションが終了すると,カンファレンスに関する資料などが入った袋が渡された。この袋の中には「Developer」「Business」「Designer」と書かれた三つのタグが用意されていた。このタグを身に付けることにより「この人はどんな人なの?」ということが一目でわかるという仕掛けだ。期間中に会場内を見渡すと,このタグを二つつけている人が多い。広い視野を持って仕事に取り組んでいる人が多いことがわかり,非常に印象的だった。

MicrosoftがSilverlightにかける意気込み

 前回(MIX06)と比較したMIX07の特徴は,Webデザイナー/Webエンジニアに向けた,いくつかの明確なアピールポイントとビジョンが示されたことである。MIX06以降,Webの世界に変化をもたらすことも目的としたいくつかの技術という「点」が,クライアントの環境,開発者の環境,テクノロジ,サーバーという「線」となって見えてきたことが,昨年との大きな違いではなかろうか。

 大きなトピックスは,より具体的な様子を見ることができたFlash対抗ソフトの「Silverlight」(関連記事1関連記事2)。SilverlightについてはMIX07の2週間ほど前に発表されたばかりだったのだが,MIX07では詳細な内容が披露された。驚くことに,発表されたばかりの「Silverlight 1.0」はまだまだβ段階であるにもかかわらず,MIX07で早くも1.1のアナウンスがされた。しかも,1.0はもちろん,1.1を実際に動かすデモンストレーションも行われた。MicrosoftがSilverlightにかける意気込みが伝わってくる。

 実は筆者はSilverlightについて今回は,特定のクライアント・マシンで動作しているのが披露されたり,今後のロードマップが詳しく発表される程度ではないかと予想していた。しかし1.0はもちろんのこと,1.1についても,動作サンプルのほか,ムービーを編集し配信するまでの作業や,ムービーを再生する際のスキンをWebデザインツール「Expression Blend」を使用して変更するといった作成に関するデモンストレーション,Windows+IE以外のブラウザやOSでの表示などがデモンストレーションされ,実用に向けて秒読み段階に入っていることを強く意識させた。

 Silverlight 1.0はJavaScript対応になっており,どちらかというとメディア・インテグレーションが主である。メディア・インテグレーションのために,デジタルコンテンツ管理ツール「Expression Media」のエンコーダが用意されており,編集作業が非常に容易に行えるのが印象的だった。一方Silverlight 1.1は,CLR(Common Language Runtime)とDLR(Dynamic Language Runtime)サポートがされる。.NET FrameworkベースのC#のほか,RubyやPythonといった,いわゆる軽量言語がサポートされるのが面白い。しかもクロスプラットフォームである。そのほかには,Visual Studioの次期バージョンである「Orcas(開発コード名)」,Ajaxフレームワーク「Microsoft ASP.NET AJAX」,統合デザインソフト「Expression Studio」(関連記事)などに関する内容がキーノートやセッションで取り上げられていた。

 会場内でMacintoshを見ることが多かったことにも注目するべきであろう。Microsoftの社員がMacを操作していたということは,ハードウエアのパフォーマンスという意味合いもあるのだろうが,それ以上にユーザーの環境について,Microsoftが本気で取り組んだ結果と取るべきである。Windowsだから,Macだからという括りで考えているようでは,MicrosoftにもAppleにも置いて行かれることになりかねない。

 会場ではExpression Studioが米国で出荷開始になるというアナウンスがあった。同時に,Mayプレビューという形でBlendのバージョン2がプレビューされた。Silverlightへの対応が主なところだと聞いているが,非常にサイクルが速い印象を受けた。それだけMicrosoftが力を入れている証拠なのであろう。セッション内ではWebページ作成ツール「Expression Web」の次バージョンExpression Web 2についても紹介があり,Microsoftがリッチなコンテンツだけではなくトラディショナルなサイトについても決して軽視していないのだということを感じる。もっとも,「先日Expression Webが発売されたばかりなのに」とも感じずにはいられないのだが。

二つの基調講演で
Microsoftが伝えたかったこととは?

 初日の基調講演はRay Ozzie氏のスピーチからスタート。Universal WebとExperienceの融合が今後必要となり,ソフトウエアとサービスが一つになってパワフルなものなっていくと説明した。様々なデバイスで動作可能となってきているUniversal Web。今後はオフラインで動作したり,デスクトップ・アプリケーションと連動していくことが求められる。よりインタラクティブなExperienceも重要なポイントである。このようなUniversal Web開発のためには,デベロッパー,デザイナーの境界線を取り払い,共同で作業できる環境が肝心となる,とのことであった。

 内容的にはSilverlightの特色であるクロスプラットフォーム,マルチブラウザ・プラグインの有用性が前面に押し出されていた。競合するAdobe SystemsのFlashやApolloを意識してか,「様々なテクノロジがある中で,どれを選択するかは“デベロッパーがどれだけリッチなユーザーExperienceを目指しているか”によって決まる」と語り,SilverlightのアピールとともにExperienceデザインの重要性を打ち出していた。

 Silverlightのアピールポイントを紹介したところで,スピーチはScott Guthrie氏へとバトンタッチ。SilverlightとExpression Studioのメリットが紹介された。

 Netflixのデモでは,オンラインでの視聴時にチャプター選択が可能であったり,Netflixのサービスで視聴画面を他のブラウザでシェアし合えて,さらにその画面上でチャットが可能である様子が紹介された。CBS televisionは,Silverlightによってすべての人がビデオやオーディオをアップロードしてシェアでき,インタラクティブにすべてをブリッジするコンテンツを発表していた。

 Beau AmburのTopBananaというビデオ編集サイトのデモでは,ビデオの検索,編集が簡単に行え,同時に九つのビデオを再生できることを披露していた。すべてがWebに50kで届けられるようだ。また,ビデオを引き伸ばすと,ビデオがフレームとして表現され,ビデオの内容が視覚的に確認できるようになっていた。

 MLB.comでは,試合をインタラクティブに視聴できるというExperienceの紹介があった。携帯電話でも視聴できるようになっているので,野球ファンにはたまらないコンテンツではないだろうか。

 2日目の基調講演は,エンタテインメントとデバイス・セクションを統括しているRobbie Bach氏がスピーチ。コミュニケーション・ゲーム・ビデオ・オーディオなどの多様なエンタテインメントが強固につながっていくと訴えた。Microsoftが媒体との深いつながりを構築するための四つのパートナー企業と提携していることについて述べ,これまでばらばらであったMicrosoftのゲーム広告戦略に関する変革への取り組みを紹介した。「Microsoft」と「エンタテインメント」という二つの言葉が並ぶことには,まだ少々の違和感を覚えずにはいられないところもあるのだが,MIX07という場を通してMicrosoftの積極的な取り組みが感じられた。

 この基調講演の中では,ハンバーガー・チェーンのBurger Kingとともに制作したXboxのゲームコンテンツへの取り組みを紹介。低価格なゲーム,ゲームという娯楽体験と広告をつなげるという取り組みは非常に興味を引いた。また,ゲーム中の看板などを活用した広告など,そのアイデアにも注目していくべきであろう。このほか,ディズニーや日産,BBCラジオとエンタテインメントとの関連を紹介。Microsoftのエンタテインメント戦略を紹介していった。このようなMicrosoftの積極的な取り組みについて,今後の動向を注目していく必要があるだろう。

 その後司会が交代し,マーケティング戦略に関するパネルディスカッションが展開された。このようなディスカッションがMIXの中で行われたことも興味深い。

3000名の参加者は何を感じ取っていったのか

 セッションでは,UX(User Experience)やRIA(Rich "Interactive" Application)というキーワードを掲げ,Experienceデザインの重要性を示唆するセッションが豊富に用意された。UXやRIAに関するセッションは,普段からこのようなキーワードに慣れ親しんでいる人が聴講しても「内容が濃い」と感じるような深いところまで内容を掘り下げるセッションが多く,Microsoft自身がこれらのキーワードに対して真剣に取り組んでいるのだということが伝わってくる。ただ,これらのセッションはおおむね聴講者が少なく,残念ながらまだまだExperienceデザインの重要性がデベロッパーに広く浸透していないように感じた。

 デベロッパー向けのセッションは傾向が二つに分かれた。具体的には,コアな部分まで説明するセッションと,「SilverlightやOrcas,AJAXなどをこんなに簡単に扱えるんですよ」という簡単さをデモンストレーション中心にアピールするスターター向けのセッションである。このように2極化していたのは,今回のトピックスであるSilverlightが,革新的なテクノロジというよりも「ユーザーの裾野を広げる」テクノロジであることが関連していたのではないだろうか。サーバーサイドのセッションでもSilverlightを切り口とした解説が多く,Microsoftの意気込みを感じずにはいられない。

 現場の製作者に向けた内容だけではなく,Business Decision Maker(決裁権のある人)向けの内容が用意され,様々な立場のスタッフにフィットするセッション構成となっていたのも非常に興味深い。セッションでのキーワードはやはり“Experience”。全体的に発信されていたメッセージは,「Experienceが生み出す感動こそが人の心を動かす」ということであった。

 そして,それを作るツールとしての技術が必要である。テクノロジがあり,商品やサービスがあり,そしてそれがExperienceとなる。しかし,そのExperienceとは意識しないところで生み出される。何がどうExperienceなのかを知ってからこそ,エモーショナルなものが生み出される。デベロッパー,デザイナーはExperienceを創造し,企業はそれを活用する。クライアント,デベロッパー,デザイナー,双方向で作り上げていくワークフローが必要になるであろうとのことだった。ビジネス的な観点から今後の方向性を示唆する内容で,チャートやフローがわかりやすく表現されていたり,またそれを踏まえてのデモがあったりと,ビジネスの広がり,奥深さを感じることができた。

筆者:
大関 興治,齋藤 善寛,東 賢,有馬 正人,新谷 剛史,玉城 えり子,菅 晃平
株式会社セカンドファクトリー
 設立10年目を迎える本年は「次世代品質目指して ~Sophistication for the Future~」のコンセプトのもと,RIA/Rich Client開発をはじめとする開発を行っております。