少し前、米国の大手ソフト会社の経営幹部を取材する機会があった。その幹部は同社の製品戦略を説明している時、ドラッカー氏のことを引き合いに出した。

「ピーター・ドラッカーが提唱した“ナレッジワーカー”は最新の情報化オフィスで仕事をしている。しかし、情報を活用して仕事をする人はオフィス以外にもたくさんいる。病院で看護に当たる人、工事現場で家を建てる人、こうした人たちにも我々は情報活用のツールを届けたい」

 彼がドラッカーのナレッジワーカーに入らないかのように挙げた人たちは、まさにドラッカーがいうナレッジワーカーであり、テクノロジストである。
 取材の本筋とは関係なかったが、筆者はドラッカー学会員として、彼に次のように伝えた(厳密には日本語で以下の主旨をつぶやき、通訳してもらった)。

「情報や知識を活用し、自分で考え、マニュアルに書いていないこと、言われていなこともする、これがドラッカーのいうナレッジワーカーである。あなたの挙げた例はすべてナレッジワーカーです」。

(谷島 宣之=ドラッカーのIT経営論研究グループ)


ドラッカーのIT経営論研究グループ:社会生態学者、ピーター・ドラッカー氏の情報およびITに関する論考を読み解くことを目的とした有志の集まり。主要メンバーは、ドラッカー学会に所属するIT産業関係者である。