米MicrosoftのZig Sarafin氏(リアルタイム・コラボレーション担当ゼネラル・マネージャー )によると,「昨年Microsoftは,『Live Meeting』を使ってウェブ会議を多く行ったので,約7000万ドルの出張費を節約できた」そうである。何百万ドルもの出張費を節約できるのなら,IT担当者は「統合コミュニケーション(Unified Communication,UC)」への投資を正当化できるかもしれない。

 まだ「統合コミュニケーション(UC)」のことをよく知らない読者も多いだろう。米国「Windows IT Pro Magazine」誌が読者300人を対象に行った調査では,多くの回答者が,UCの実装を検討する前に,そのコンセプトやテクノロジ,利点についてもっと深く理解する必要があると述べている。

 回答者の57%は,統合コミュニケーションのコンセプトと利点を理解していると答えた。29%はUCについて耳にしたことはあるが,あまりよく知らないと答え,13.7%はUCについて全く知らなかった。UCのことを理解していると答えた多くの読者も,「統合メッセージング(UM)」とどこが違うのか,UCソリューションにおいて「Exchange Server 2007」は何らかの役割を果たすのか,そして役割を果たす場合,それはどんな役割なのか--,といったことに関しては,完全には理解していなかった。調査回答者の多くは,次のような質問をした。「UCとは,具体的にどのようなものなのか,そしてUCを使えば,時間とお金を節約できるのか?」

統合メッセージングを拡張する

 Sarafin氏は「UCとUMは同じものだと考えている人が多い」と述べる。実際にこの調査でも,回答者の多くは「UCとは電子メールとボイス・メールを統合したもの」と答えていた。だが,「電子メールとボイス・メールの統合」はUMのことである。「Exchange 2007 Enterprise Edition」と「Outlook 2007」を使うと,ユーザーはExchange Serverの受信トレイから,自分あてのボイス・メールや電子メールにアクセスできる。Sarafin氏は,「Exchange 2007のUM機能を使うことで,音声認識技術によってカレンダ機能や社内ディレクトリへアクセスできるようになる。例えば,Microsoftの代表番号に電話をかけて話したい相手の名前を言うと,音声認識システムが電話の取り次ぎをしてくれるのだ」と説明する。

 Exchangeベースの非リアルタイムUMプラットフォームを補完するのが,UCの基盤である「Live Communications Server(LCS)」だ。Sarafin氏はUCをこう説明する。「UCを定義するとき,私たちは現在ビジネスの世界で使われている個別のコミュニケーション技術を考察することから始める。音声会議やPBX,インスタント・メッセージング,電子メール,ボイス・メール,ビデオ,携帯電話などだ。UCとは,これら別個の技術の間にある垣根を取り払って,PCや携帯用デバイス,オフィス内の電話などで機能する単一のソフトウエア体験を実現することを言うのだ。UCを利用すると,相手を捕まえるのに4~5個のアプリケーションを経由する必要はなく,1つのコミュニケーション技術を利用するだけで済むようになる。捕まえたい相手の電話番号を探す必要はなく,その人物の名前を入力したり,友人リストを見て,その人物が通信可能な状態かどうかを確認したりするだけでいいのだ。これが,UCの基本的な考えだ」

 「ExchangeがOutlookと連携するように,Live Communications ServerはUCクライアントの『Office Communicator』と連携する。CommunicatorはIMクライアントのように見えるが,このクライアントから電話をかけることもできる。つまり,ソフトフォンとして機能するのだ。Communicatorは,ウェブ,ビデオ・音声会議,電話の発信,インスタント・メッセージング,他ユーザーの通信可能状況の確認などのユーザー・エクスペリエンスを,PC上で提供する」(Sarafin氏)

重要なのは「プレゼンス(在席情報)」

 通信可能状況,または「プレゼンス(在席情報)」の概念は,UCを理解する上で重要である。プレゼンス機能が使われている典型的なものにインスタント・メッセージング(IM)がある。IMアプリケーションでは,通信したい相手がオンラインにいるのか,取り込み中なのか,あるいは携帯用デバイスで連絡可能なのか,ということを確認できる。MicrosoftのUCでは,Active Directoryを利用して組織内の全メンバーのプレゼンス・データを提供できるようにすることで,プレゼンス機能を拡張している。

 Windows IT Pro Magazineの読者調査に関して,Sarafin氏はこうも述べている「調査回答者は人々と連絡を取ることに問題を抱えており,相手の通信可能状況やプレゼンスを知りたい,と思っている。その一方で,回答者が所属する会社の65%は,職員によるIM使用を認めていない。これは皮肉的ですらある」

企業でもIMは活用できる