かつて仮想化技術は,一部の企業の特別なシナリオにおいてのみ使用価値のあるものだったが,現在ではあらゆる規模の企業にとって重要な技術に変わっている。もちろん,この変化を引き起こした会社は米VMware(現在は米EMCの一部門)であり,私たちは彼らの功績を認めなければならない。VMwareは10年以上にわたって,PCプラットフォーム・ベースの仮想化(つまり,x86やその後継プラットフォーム上での仮想化のこと)を一貫して推し進めている。

 最近になって,この仮想化の波に飛び乗る会社が他にも出てきた。Microsoftもそうした会社の1つだ。彼らはVMwareのライバルであるConnectixが持つ仮想化関連の資産を買収し,同社のデスクトップ・ベース製品「Virtual PC」のブランドを変更するという控えめな方法で,この市場に参入した。その後Microsoftは,様々なバージョンのVirtual Serverも出荷している。この製品は,ホストOS(この場合はWindows Server)の上にある仮想化層のさらに上に自らの仮想マシン(VM)が存在するという点で,ホスト・ベースの仮想化製品とみなすことができる。同製品は,最終的には無料で公開された。そして,Longhorn Server向けのハイパーバイザー・ベースの仮想化アドオンである「Windows Server Virtualization」がやがてリリースされようとしている今,仮想化技術はさらに注目されようとしている。

 筆者はWindows Server Virtualizationのことを,Microsoftの仮想化戦略における大きな進歩だと評価している。Windows Server Virtualizationは,Longhorn Serverの「Server Core」インストールと呼ばれる構成の上で実行される。Server Coreインストールとは,ハイパーバイザーに対して最小構成に近いOS環境を提供する,軽量バージョンのOSのことだ。これによってパフォーマンスは,現在使われているVirtual Serverのようなホスト・ベースの製品に比べて,劇的に向上するはずだ。

 Microsoftがいくらかの市場シェアを奪うのは確実だと警戒心を強めたVMwareは最近になって,いくつかのメッセージを公表し始めた。仮想化ソリューションを自社に導入しようと考えている人にとって,これらのメッセージはこの上なく重要だと筆者は思う。1つ目のメッセージは,ある人にとっては自明のことかもしれないし,他の人にとってはそうではないかもしれないことである。そのメッセージとは「仮想化は→既に,あらゆる規模の会社が採用すべきメインストリームのIT技術になっている。仮想化技術について尋ねるべき質問は,もはや「if(もし~なら)」ではない。その代わりに,「where?(どこで?)」,「when?(いつ?)」という質問をすべきなのだ」というものであった。

 これに付け加えて,「which?(どちらの?)」という質問もするべきであろう。例えば,「どちらの仮想化技術を基にして自分たちのシステムを構築するべきなのか?」といった感じだ。以前報じられたように,Microsoftは仮想化機能をWindows Serverに統合する作業に取り組んでいる。高度に統合された安価なソリューションを探している顧客にとって,Microsoftのこの取り組みはビジネス的な観点から意義のあることだと筆者は思う。もちろん,これはWindowsしか使わない人に限っての話だ。

 VMwareは,別のソリューションも提供している。このソリューションで特徴的なのは,Windows以外のシステムでも動作するということだ。さらに同社は,次のような至極当然の指摘もしている。「VMwareがハイパーバイザー・ベースの製品を最初に出荷したのは約6年前で,VMwareはそれ以降の時間を,新しい改訂版や純粋な新製品を開発して仮想化技術を向上させることに費やしてきた。これらの改訂版や新製品の多くは,VM管理やプロビジョニング,自動リソース割り当てに関するものである」。言い換えると,VMwareは今でも仮想化技術の第一線におり,Microsoftが一般に出荷するどころか,まだ作り終えてさえいない種類の製品を,既に出荷しているのだ。本当の意味でVMwareが販売しているのは,経験や信頼性,安定性であり,仮想化技術という比類なき生態系の市場浸透なのだ。

 どの仮想化ソリューションが市場で勝利を収めるかに関係なく(仮想化技術は大きな市場なので,MicrosoftとVMwareは共存共栄できると筆者は考えている),この競争によって将来のデータ・センターやサーバー・ルームは,今とは劇的に違うものになるだろう。VMwareは,基本的にハードウエア・リソースをプールし,それらを物理環境と仮想環境の間で必要に応じて動的に割り当てる企業を想定している。将来的に物理サーバーの数は減少するだろう。だが未来の物理サーバーには,まるで仮想化のために特別に設計されたような,エネルギー効率のいいマルチコア・プロセッサーが搭載されるため,パフォーマンスはより強力になるだろう。そしてiSCSIや他のストレージ技術が共有ストレージのコストを引き下げている今,パズルの最後のピースがはめられようとしている。技術について考えるとき,未来の可能性への興奮を抑えるのは難しい。だが仮想化技術に関して言えば,「今,可能なこと」についても,しっかり考えておくことが賢明だと筆者は思う。