テレプレゼンスは「HD」(High Definition)対応の大型ディスプレイを使った次世代のテレビ会議システム。とはいっても,単に高精細の映像を映し“きれい”に“よく見える”ようにするのが目的ではない。遠隔地にいる相手があたかも目の前に座っているかのように見せる存在感や一体感を実現するのが目的である。

 こういったテレプレゼンス・システムを,2006年後半に日本ヒューレット・パッカード(日本HP)とシスコが市場投入。これに続き,日本タンバーグ,ポリコムジャパンもテレプレゼンスを発売する予定だ。価格は1000万円以上と決して安くはないが,演出する臨場感は従来のテレビ会議を大きく超える(参考記事:解像度が常識を変える,テレプレゼンスの凄さ)。

 これまでのテレビ会議システムは,遠隔地にいる相手先の姿を見て,声を聞くための“装置”だった。そのためにカメラやディスプレイ,マイクやスピーカなどを設置,それらを意識して離れた相手と“テレビ会議”を実施していた(図1)。

図1●テレビ会議からテレプレゼンスへ
図1●テレビ会議からテレプレゼンスへ

 テレプレゼンスでは,その認識が大きく変わる。遠隔地にいる相手が同じ会議室内にいるようにシステムが演出する。大型ディスプレイに相手の姿を“等身大”で映し出す点がポイントである。その際,複数台のディスプレイを並べて一つの横長の画面を作り出すことも特徴だ。同じ会議室にいるように見せるため,テーブルや照明装置などの周辺設備が付属し,それらの設置場所もあらかじめ決められている。

会議室までセットで提供する日本HPの「Halo」

写真1●HPの「Halo Collaboration Studio」
写真1●HPの「Halo Collaboration Studio」
東京と世界各地にあるHPの拠点を接続。左と中央が米国,右がシンガポール。上のディスプレイは,ドキュメントやアプリケーションを映したり,システムを操作するときに使う
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 テレプレゼンスの典型的な製品が昨年8月に発売された日本HPの「Halo Collaboration Studio」(Halo,写真1)だ。Haloは,機器はもちろん,会議に使うスタジオ,ネットワーク,これらの設置作業や遠隔保守までをセットにした製品である。

 米映画会社ドリームワークスと共同開発しており,映画のプロが作ったスタジオがセールス・ポイントの一つ。「臨場感を高めるため照明やテーブルの色や形を最適化した。放送局のスタジオと同じクオリティ」(日本HP)だとする。会議に使う部屋,内装まで細かく設定することで,テレプレゼンスの効果を高めている。最大4カ所のスタジオ間で会議を開催できる。

写真2●天井に組み込んだカメラでテーブル上のプリント基板を映す
写真2●天井に組み込んだカメラでテーブル上のプリント基板を映す
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 採用したディスプレイは4枚の50インチ型PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)。うち3枚は横に並べて配置し,会議参加者を映す。残りの1枚は情報共有用。「720p」の高解像度を活用し,会議で使う紙の資料やプリント基板などを映し出す(写真2)。

 ネットワークは,日本HPが用意する専用回線「Halo Video Exchange Network」を使う。専用回線は622Mビット/秒(一部は2.5Gビット/秒)のバックボーンで,高解像度のテレビ会議の映像を遅延なく伝送する。日本HPによれば,Haloは「全世界で90拠点くらいに導入されている」といい,すでに国内での導入事例もある。