日経コミュニケーションは2月27日から3月6日まで,企業ユーザーの読者モニター399社の協力を得て,NTT東西の業務範囲拡大やNTTグループのサービス提供についてのアンケートを実施し,128社から回答を得た。ここでは,自由記入欄に寄せられた主な意見を,4視点に分けて紹介する。併せて,第1回~第4回に載せられなかったその他の回答結果も掲載する。

自由意見

NTT東西のサービス利用時の不満

●NTT東西だけでなく,NTTグループ内の連携が悪い
●対応がすべてにおいて遅く,柔軟性がない。手続き,開通までの納期が長い
●通信サービスの障害時に何も連絡がないので,トラブルの発見が遅れてしまう
●東西間を結ぶ回線を余分に引かなければならないので,回線と機器の追加費用が発生する
●NTT東日本について。競争意識が低いのかレスポンスが悪すぎる。正式見積書を一つもらうにも,社内手続きなどで約1カ月も待たされた。提案営業の再アプローチなども皆無に等しい
●ノウハウのあるエンジニアがNTT東西からグループ会社に流れており,今後も安定したサービスを提供できるのか心配
●東京からNTT東西の地方支店に依頼をかけたことがあるが,コントロールがききにくく,殿様商売の体制が根強く残っていることを感じた

NTT東西の業務範囲拡大への要望や期待など

●問い合わせ窓口や料金,サービス名称の統一などに期待
●東西のサービス・レベルの一元化が図れるようになるのでは
●特にフレッツ・シリーズのサポート窓口の一本化を求めたい
●インフラ開放を進めることが前提だが,業務範囲拡大は提供サービス拡大や競争を生むため悪いとは思わない
●NTTのおごりがまた発生する可能性が高く,NTT経営陣の謙虚な態度を望みたい
●NTTのシェアが高まると,値上げだけでなく,サービスや機種の選択肢,利用期間まで固定化される。例えば,NTTのFMCサービスが始まったとしても,「導入数年後に全端末をNTTの都合で入れ替えなければならない」などの事態になったら困る
●NTT東西は,それぞれ完全に独立した会社とするか,完全に両社のサービスを均一化するかどちらかにすべき
●現状でもNTT東西とNTTコミュニケーションズの切り分けが,企業ユーザーからは分かりにくい。むしろNTT東西は業務縮小し,1社(例えばNTTコミュニケーションズ)に集約した方がすっきりする
●企業ユーザーとしては利便性が上がる。ただし他事業者との格差が広がり,過去のNTT電話のような状態は問題。インフラ開放をさらに進めて,適切な競争状態を維持した形の業務拡大を望みたい
●ユーザーの利便性向上やNTT自体の合理化のためにも望ましい。しかし同時に,適正な競争環境を作らないと,他事業者が押し潰されるだけになるので注意が必要
●NTT東西の業務範囲拡大は歓迎するが,独占になって,その状況にあぐらをかく可能性を払拭できない。公正な競争が継続できる施策とセットで考えるべき
●現状は,業務内容が規制されすぎていると思える部分がある。NTT再編は,本当に正しかったのかを検証した上で業務拡大を考えるべき
●NTT東西が別会社でも構わないが,連携のとれたサービスを用意し,東西ごとに認証機器や回線,通信機器などをそれぞれ保有しなくてもよい状態にしてほしい

NTTのサービスを選ぶ理由,グループ全体への期待や評価

●インフラ保有度は,他社に比べて優位性がある
●NTTは老舗としてパワーがある会社だと思うが,今はそれにあぐらをかいて,他社に負けそうになると追随する戦略を取っているように見える
●大都市でない場所でも提供エリアとしている
●保守体制が広い地域で組まれており,故障などの場合に比較的短時間で対応してもらえる
●総合的な技術力のポテンシャルを持っている
●現状の光ファイバ,固定電話回線の大半を保有している安心感から,企業ユーザーとして,どうしても優先的に採用する方向で検討してしまう
●当社は過疎地域にも事業所があるため,NTT以外は選択できない
●当社の本社は地方にあるため,NTT以外にサービスを選べる状況にない。こうなると地方に本社を構える企業は同様だと思うが,NTTに期待せざるを得ない
●NTTはFTTHのシェアよりも,提供地域を広げてほしい
●現状ではFTTH回線の業務利用はNTT東西以外の選択肢がない。この状況でこれ以上NTTのシェアが上昇する施策には疑問

NTTグループの組織体制の在り方について

●サービスを提供する会社とインフラ会社に分離すべき。NTT東西,NTTコミュニケーションズなどをサービス提供会社にして互いに競争させ,他事業者も同条件でインフラを使える環境にすれば今よりも競争が進む
●NTT東西の統一的なサービス提供は望ましいが,旧電電公社からの独占的なインフラ保有は,競争によるサービス料金低下の阻害要因となる
●結局,1社体制時代と同じ形態に戻りつつあるということは,ユーザーにとって,その状態が良かったのではないかと思う
●NTTの競争優位性が高すぎるので,電力系通信事業者各社が対等に戦えるレベルまで再編成してはどうか。地域系NTTからは「NTT」ブランドを外すのも一案
●NTT一本化の方が,利便性の面でユーザーとしては安心感が持てる。NTTグループは,固定系と移動体の2社に分割するレベルでいいのではないか
●当社のような地域が限定される会社の場合,NTTが東西に分割されていることよりも,固定や携帯,保守の会社が別々になっていることに不満を感じる

その他の回答

Q1 .あなたは、NTT東西が「NTT法(※)」と呼ばれる法律により、業務範囲が規定されていることをご存知ですか。(1つだけ)
(※)NTT法とは、「日本電信電話株式会社等に関する法律」のことで、NTT(持ち株会社)・NTT東日本・NTT西日本の目的・責務等を定める法律です。

分析●NTT東西に業務範囲の規制があることを知っている企業ユーザーは約7割に上る。「NTT東西は自由に業務範囲を広げられない」という認知度は高い
分析●NTT東西に業務範囲の規制があることを知っている企業ユーザーは約7割に上る。「NTT東西は自由に業務範囲を広げられない」という認知度は高い

Q2 .NTT東西が提供する以下のサービスのうち、あなたの会社で利用しているものはありますか。(それぞれ1つずつ)

分析●NTT東西が従来の業務範囲を広げて提供し始めたサービスの利用状況。都道府県ごとのIP網を県間接続して広域化した「フレッツ・オフィス ワイド」や,固定電話から携帯電話へ発信する際の割安サービスの利用率が高い。法人向けの「ひかり電話」は,「今後使ってみたい」とするユーザーが最も多い
分析●NTT東西が従来の業務範囲を広げて提供し始めたサービスのうち,都道府県ごとのIP網を県間接続して広域化した「フレッツ・オフィス ワイド」や,固定電話から携帯電話へ発信する際の割安サービスの利用率が高い。法人向けの「ひかり電話」は,「今後使ってみたい」とするユーザーが最も多い [画像のクリックで拡大表示]

Q3 屋外では携帯電話として利用し、企業内では固定電話の端末として使えるワンフォン・サービスなどが、今後登場するといわれています。NTTグループが提供する(NTT東西のFTTHやひかり電話と、NTTドコモの携帯電話を組み合わせた)ワンフォン・サービスを、あなたの会社で利用したいと思いますか。

分析●固定と携帯の融合である「FMC」サービスに対する期待度は,まだあまり高くない 具体的なサービス像が分かるまでは「様子見」といった感が漂う
分析●固定と携帯を融合させた,いわゆるFMCサービスに対する期待度は,まだあまり高くないと言える。具体的なサービス像が分かるまでは,判断しづらいようだ

Q4 通信事業者(NTTグループ、KDDI、ソフトバンクなど)間による、現状の設備競争やサービス競争に、どのような不満がありますか。(いくつでも)

分析●通信市場で,事業者間の競争があまり進んでいないことへの不満が多い。他の設問への回答と合わせて考えると,NTTを一社体制に戻したとしても,他事業者が競争できる環境や競争ルールが求められていると言えそうだ
分析●通信事業者間の競争があまり進んでいないことに起因する不満が多い。上位三つの不満の根幹は同じものと言える。他の設問への回答と合わせて考えると,単にNTTグループを縛る競争促進策を企業ユーザーは支持しておらず,ユーザーの利便性を損なわない形での公正競争ルールの整備が求められている [画像のクリックで拡大表示]