最近、話題となっているフェムトセル(Femto Cell)。「携帯電話の通話料が安くする」ということで注目されている。果たして、通話料は安くなるのだろうか。

 フェムトセルは非常に小さなセルを意味し、小型の基地局を家庭などに設置して携帯電話で通信できるようにすることである。この小型基地局を携帯電話網にインターネットを介して接続。携帯電話をコードレス電話の子機としたIP電話のような形態になり、通話料が安くなるのでは、と期待されている。

 これは、NTTドコモの「N900iL」「N902iL」やKDDIの「E02SA」といった3G/無線LANデュアル端末の使い方に似ている。オフィス内では無線LANを使ってIP電話として通話し、屋外などの無線LAN圏外では携帯電話として利用する。オフィス内ではIP電話を使うため、通話料が抑えられる。

 無線LANの代わりに、携帯電話の電波、通信方式を使おうというのがフェムトセルである。無線LANという特別な機能が不要であるため、携帯電話がほぼそのまま使えるというメリットがある。

 しかし、携帯電話の周波数帯を使う以上、小型基地局をユーザーが勝手に設置、設定するというわけにはいかないと思われる。携帯電話の無線ネットワークに悪影響を及ぼしかねないからだ。と考えていると、NTTドコモの「OFFICEED」やKDDIの「OFFICE WISE」が浮かんでくる。これらのサービスは、オフィス内に専用の小型基地局を設置し、初期費用および月額定額料金を支払えばオフィス内の内線通話は使い放題となる。しかし、外線は通常料金と変わらない。

 フェムトセルを、こういったビジネス向けサービスの小型/簡易版と見ることができる。基地局が小型になろうが、基地局と携帯電話網を結ぶ回線が安価になろうと、基地局は基地局。設置/設定や運用の手間やコストがかかる。家庭内から屋外に移動しても通話を継続できるようにするハンドオーバーをあきらめたとして、それで通話料を安くなるのか疑問である。

 基地局ではなく、単なるアクセス・ポイントやコードレス電話の親機として、フェムトセルを使う方法も考えられる。つまり、フェムトセルを携帯電話網とは独立させて、周波数だけ携帯電話と同じ周波数帯を利用する形態である。これを実現するには、PHSのように公衆用と家庭用で使う周波数を分ける必要が出てくるだろう。

 この形態では、携帯電話をコードレス電話の子機として使えるくらいのメリットしかないが、通話料は固定電話と同じにできるだろう。ただ、現行の携帯電話をそのまま使えるわけではない。無線LANとのデュアル端末よりも簡単であるが、これに対応するための開発、実装が必要となる。

 とはいえ、通話料金は、携帯電話事業者の戦略によるところが大きい。携帯電話のオプション・サービスではなく、携帯電話を端末とした固定電話サービスを提供する位置づけで臨めば、固定電話並みの通話料金となる可能性が出てくる。もっとも携帯電話の通話料自体を安くするというのが一番簡単でユーザーにとってありがたいのだが。