浜松市立図書館が導入した新システムのサービス向上の目玉である自動貸し出し機は、約10冊の貸し出し処理が一度に可能である。借りる本をリーダーアンテナのある台の上にまとめて置くだけの簡単さや、何を借りたかを職員に見られずに済むことなどから、非常に好評だと言う(写真2)。

 自動貸し出し機には前面下部にもう一つのアンテナを用意してある。これは書籍を袋などに入れたままで貸し出し処理できるようにするためだが、機器の調整がうまくいかず当初はサービスを提供できなかった。

写真2 自動貸し出し機 画面下の台と前面下部にアンテナを設置。台に10冊程度乗せてもまとめて読み取れる。前面は袋やかばんに入れたまま読み取るためのアンテナ。

 2006年10月の利用状況を見ると、貸し出し冊数は前年度の1カ月平均を2割ほど上回る約40万冊。そのうち自動貸し出し機によるものが約12万5000冊に上る。自動貸し出し機は10館だけの設置にもかかわらず、すでに全体の3割近くを占める。「今後はもっと自動貸し出し機の利用が増えると見ている」(辰巳館長)。カウンタでの貸し出しも複数冊をまとめて読み取れるために、特に大規模館などの繁忙期に効率が向上している。

 ただし貸し出しカウンタでは、ICタグの情報はまとめて瞬時に読み込めても、その後のデータの書き込みと盗難防止ゲート用のデータの解除にそれぞれポップアップ画面が出て、確認ボタンを押さないと処理が続けられない。自動貸し出し機では、盗難防止データの解除前に貸し出しレシートが印字されるために、処理が完了せずに持ち出してしまう“事件”が頻発している。こうした小さなシステムの不都合により、ICタグの早いレスポンスの効果を生かし切れていないのが現状で、今後の要改善点だという。

 蔵書点検は、2007年に順次実施する。棚から取り出さずに情報をまとめて読めるICタグシステムの採用で、バーコードに比べて読み取り時間は「3分の1程度に減らせられると見ている。棚卸し作業全体で、作業を7割まで減らすことが目標だ。7日の作業が5日に短縮できれば、平日だけで棚卸しを済ませて土曜日と日曜日は開館できる」(辰巳館長)と期待を寄せる。



本記事は日経RFIDテクノロジ2007年1月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです