ルーターがパケットを中継するにあたってルーティングテーブルに該当する経路情報がない場合,「デフォルトルート」と呼ばれるルートにパケットを転送します。ネットワークを構築・運用するときは,このデフォルトルートの通知や再配布を考える必要があります。今回はデフォルトルートがどのように配布されるかを学習しましょう。

デフォルトルートの設定に使うコマンド

 最初に,デフォルトルートの設定について解説します。デフォルトルートの設定に使うコマンドには3つの種類があります。ip route,ip default-network,ip default-gatewayです。

 ip routeコマンドはスタティックルートを設定するコマンドです。このコマンドでデフォルトルートを設定するためには,ネットワークアドレスが0.0.0.0でサブネットマスクが0.0.0.0というネットワークあてのスタティックルートを設定します。

  • (config)# ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 [ゲートウェイアドレス | インタフェース]
    • [ゲートウェイアドレス | インタフェース]
      • デフォルトルートのネクストホップのアドレスもしくは送信インタフェース

 ip default-networkコマンドはデフォルトネットワークを設定するコマンドです。このコマンドで指定されたネットワークがルーティングテーブル内に存在すると,そのネットワークへのネクストホップがデフォルトルートになります。つまり,このコマンドでは直接接続のネットワークをデフォルトルートには設定できません。なお,ip default-networkコマンドで指定できるのはクラスフルルートのみになります。

  • (config)# ip default-network [ネットワークアドレス]
    • [ネットワークアドレス]
      • デフォルトのネットワークとして使用するアドレス

 ip default-gatewayコマンドは,ルータをホストとして使うケースなどIPルーティングが実行されない場合にのみ使われるコマンドです。IPルーティングが使用されているならば,特に使う必要はありません。

  • (config)# ip default-gateway [ゲートウェイアドレス]
    • [ゲートウェイアドレス]
      • デフォルトのゲートェイとして使用するアドレス

デフォルトルートの配布方法はルーティングプロトコルによってさまざま

 ルーティングプロトコルで他のルーターにデフォルトルートを通知する方法は,ルーティングプロトコルによってそれぞれ異なります。ただ,すべてに共通しているのは,「ip routeコマンドでスタティックに設定されたデフォルトルートは配布されない」という点です。スタティックなデフォルトルートを配布するには,別にコマンドが必要になります。

 それでは,RIP,OSPF,EIGRPのそれぞれのプロトコルについて,デフォルトルートの配布方法を見てみましょう。次の図のようなネットワーク構成図を使って説明します(図1)。

 図1 ネットワーク構成図
ネットワーク構成図

RIPでデフォルトルートを配布する
 ip route コマンドによって設定されたデフォルトルートをRIPで配布するためには,2つの方法があります。1つはRIPでスタティックルートを再配布する方法です。もう1つがdefault-information originateコマンドを使用する方法です。default-information originateコマンドにより,RIPではスタティックルートのデフォルトルート(0.0.0.0/0のルート)を配布できるようになります(図2)。

  • (config-router)# default-information originate

 図2 default-information originateによるデフォルトルートの配布
default-information originateによるデフォルトルートの配布

 ip default-networkコマンドによって設定されたデフォルトルートの配布には,以下の2つのパターンがあります。前述したように,直接接続しているネットワークをip default-networkで指定しても,デフォルトルートとして設定されません。ですがRIPでは,「直接接続しているネットワークをデフォルトルートとして配布する」ためのコマンドとして使うことができます。

  • 直接接続しているネットワークをip default-networkで指定したケース
    • RIPで自動的に配布される
  • 直接接続していないネットワークをip default-networkで指定したケース
    • default-information originateコマンドを使って配布する

 また,他のルーティングプロトコルにより境界ルータが入手したデフォルトルートは,RIPで再配信する際に自動的にデフォルトルートとして通知されます。このとき,default-information originateコマンドは必要ありません(図3)。

 図3 RIPの再配布によるデフォルトルートの配布
RIPの再配布によるデフォルトルートの配布

OSPFでデフォルトルートを配布する
 ip routeコマンドでスタティックに設定したデフォルトルートをOSPFで再配布するには,RIPと同様,default-information originateコマンドで再配布します。さらにOSPFでは,オプションを付けることが可能です。

  • (config-router)# default-information originate {always} {metric [メトリック]} {metric-type [タイプ]}
    • {always}
      • 常にデフォルトルートを配信するようになる
    • {metric [メトリック]}
      • デフォルトルートのメトリック。デフォルトは1
    • {metric-type [タイプ]}
      • デフォルトルートを配布する際のタイプ。外部タイプ1か外部タイプ2を指定する。デフォルトは「2」

 OSPFでスタティックのデフォルトルートを配布する方法は,default-information originateコマンドだけです。スタティックルートを再配布するように設定したとしても,ip routeコマンドによるデフォルトルートは配布されません。

 また,他ルーティングプロトコルにより,境界ルータ(ASBR)に配布されたデフォルトルートも,default-information originateコマンドを使って再配布します。

 なお,例外として,OSPFのABR(エリア境界ルーター)は,スタブエリア(トータリースタブエリア,NSSA含む)に対して,自身へのルートをデフォルトルートとして通知します(図4)。

 図4 OSPFのスタブエリア内にデフォルトルートを通知する
スタブエリアでのデフォルトルート

EIGRPでデフォルトルートを配布する
 EIGRPでのip routeコマンドによるスタティックのデフォルトルートを再配布するには,スタティックルートを再配布することで実現できます。また,ip routeコマンドでインタフェースを設定した場合に限り,EIGRP設定モードで「network 0.0.0.0」と実行すると,デフォルトルートが配布されます(図5,図6)。

 図5 スタティックルートの再配布によるデフォルトルートの配布(EIGRP)
スタティックルートの再配布によるデフォルトルートの配布

 図6 network 0.0.0.0によるデフォルトルートの配布(EIGRP)
network 0.0.0.0によるデフォルトルートの配布

 EIGRPでは,他ルーティングプロトコルにより境界ルータに配布されたデフォルトルートは,設定なしに自動的に再配布されます。また,ip default-networkコマンドによって設定されたデフォルトルートの場合は,RIPと同様,直接接続されているネットワークを指定した場合にのみ配布されます。