日経コンピュータ2005年2月7日号の記事をそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっていますが、BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 システムの復旧や業務再開に関しては、さまざまなケースを想定し、対策を立てている企業は多い。しかし、そこでも経験しなければわからない落とし穴がある。

システム復旧:サーバーは無事でも停電で使えず

 例えば水害対策。システムは水に弱い。電気がないとシステムが止まる。この二つはあまりに当たり前で、対策していない企業は少ない。ところが、電気設備の水害対策はどうか。

 2004年7月に起きた新潟・福島豪雨や福井豪雨では、多くの企業が浸水による被害を受けた。福井商工会議所は、ビルの2階にサーバーを設置していたためにシステムは浸水による被害を受けなかった。にもかかわらず、システムが完全に止まってしまった(図3)。地下にあった電気設備が水没してしまい、電気を供給できなくなったからだ。

図3●2004年の新潟・福島豪雨や福井豪雨災害では、地下や1階に電力設備を置いていた企業に被害が出た
図3●2004年の新潟・福島豪雨や福井豪雨災害では、地下や1階に電力設備を置いていた企業に被害が出た  [画像のクリックで拡大表示]

 福井市を豪雨が襲ったのは3連休の中日。当日、商工会議所の地下フロアでは呉服の展示会が開催されていた。だが、雨漏りがし始めたため、来場者を避難させ、展示物を運び出した。最後の品物を運び出した直後、地下フロアに大量の水と土砂が侵入してきた。このビルの地下フロアの前は中庭のようになっており、ガラス張りの壁で採光していた。大量の雨水と土砂の圧力でガラスが割れてしまったのだ。壁がなくなっては浸水を防ぐどころではなく、電気や通信設備ごと地下フロアは水没した。

 結局、システムの復旧には1週間ほどを要した。地下フロアのガラス壁を強化し、浸水を防ぐ特別製の板を設置したほか、電源設備などを設置する床をほかより高くするといった対策を講じて水没の危険を減らした。

 福井商工会議所と同じように、電気設備が地下にあるビルは多い。システムへの対策だけでなく、電気設備へも対策をする必要があるかどうかを調べる必要がある。

---------目 次-----------------------------------------------------
【総論】その災害対策は機能しない 
【現場】復旧の前段階で立ち往生、被災地で続出した誤算
(1)避難・安否確認:社員と連絡が取れない 
(2)損害把握:建物に入れない、担当者が出社できない 
(3)システム復旧:サーバーは無事でも停電で使えず 
(4)業務再開:サーバー室が温度上昇、被災なしも要対処 
【備え】リスク分析とテストで投資対効果を高める
(1)業務の重要性を明らかにしたうえで災害リスクを分析 
(2)テストを行って改善をし続ける