今回は「URIの使いやすさ」について考えてみたいと思います。URIの使いやすさ,というのは,ウェブサイトやウェブ・アプリケーションにおいて,どういうURIでそれぞれのページにアクセスできるようにすると,利用者は使いやすいのか,ということです。つまりは,どのようにURIを設計するのがいいんだろう,ということです。URIの設計については,これまでもいろいろなところで議論がなされていますので,それらの議論や動向などを見ながら,考えていきたいと思います。

 URIを話題として取り上げようと思ったのは,4月の4,5日に行われたYAPC ASIA 2007(YAPCはYet Another Perl Conferenceの略)で,Six Apartの創業者でMovable Typeの生みの親であるBen Trott氏がSix Apartのサービス「Vox」について発表を行ったとき,「Voxの出力するRSSのURLは,直感的でわかりやすくなるように設計した」という話が出てきたからです。それを聞いて,URIの設計について,ああそうだ,URIも使いやすさには大切だったよなあ,気をつけなくちゃ,と改めて思ったからです。

 最近では,ウェブサーバーの仕組みやフレームワークが改良・整備されてきました。そのため,かつてはサーバー側で実行されるプログラムは「hogehoge.cgi?data=fuga」のようにCGIにクエリー文字列を使ってデータを渡すのが普通でしたが,URIとサーバー側のプログラムのアーキテクチャやファイルの構造とを切り離すことも容易になっています。

 ちなみに,今回は「URI(Uniform Resource Identifier)」という言葉を使っています。実は「URL(Uniform Resource Locator)」という言葉とどっちを使うか,ちょっと悩みました。URIはURLに「URN(Uniform Resource Name)」などを含んだ概念ですが,普段URNってほとんど触れる機会が無くて,結局URIといったところで,URLのことを指してしまうようです。実際,筆者がこれまで書いてきた原稿では,多くの場合URLと表記してきました。今回もURLの範疇での話になるのですが,「使いやすさ」という広い範囲での話になるので,より意味の広いURIを使ってみることにしました。あと,国際化に対応した「IRI(Internationalized Resource Identifier)」というのもあります。こちらについては次回以降でちょっと触れたいなあ,と思っています。

URIを使いやすくする必要なんてあるの?

 それでは,実際に使いやすいURIについて考えていきたいと思います。が,その前に,そもそもURIを使いやすくする必要なんてあるんでしょうか。

 URIを使いやすくしたほうがいい,ということについては,様々な人によって何度も語られています。また,使いやすいURI(というよりは格好いいURI)をデザインすることはいいことだ,というのはウェブサイト,ウェブ・アプリケーションを作成するエンジニアの中には意識として結構あると思います。しかし今回,じゃあどうしてURIを使いやすくすることは良いことなのか,ということについて,書こうと思ったところ,なかなか思うように文章が書けず,わりと漠然としているかもなあ,と実は思っています。というのは,ウェブページを見る際に,常にそのURIをものすごく意識しているかというと,そうでもない感じがしているからです。

 実際,あまりウェブサイトに頻繁にアクセスしていない人ほど,URIを意識する瞬間って,その利用頻度よりもさらにずっと少なくなるかなあ,と思います。多くの人は,目的のサイトにアクセスするのに検索エンジンを利用します。それは検索エンジンで検索されやすいキーワードを見ても明らかです。Yahoo!の昨年度のランキングを見ると,mixiがトップです。mixiなんて「http://mixi.jp」というすごく短いURIでアクセス可能なのに検索をしているわけで,多くの人がURIなんてほとんど意識していないことがわかります。ちなみに2位は「http://2ch.net/」でアクセス可能な「2ちゃんねる」です。

 以前は電車の社内広告やテレビのコマーシャルで,URIを表示して「アクセスしてください!」といっていたものが多くありました。中にはえらく長いものもあったので,これは覚えられないし意味あるのか,と思っていたのですが,最近は検索エンジンのキーワードを示して「このキーワードで検索!」といったスタイルが主流になりました。このおかげで,ますますURIを意識する必要って無くなっているように思います。そもそもそういう広告のスタイルが定着すること自体に,URIを意識している人が少ない,意識するのが面倒だ,という意識がある感じです。

 以前に,「日本ではそうした傾向がより強い。それはURLがアルファベットばかりで,日本人にはなじみが少ないからだ。欧米では,アドレス欄に直接会社名などを入力してアクセスしている人が多い」という話を聞いたことがあります。しかし,Jakob Nielsen博士が1999年に書かれたコラム「URL as UI」を見ると(このコラム自体は有用なので,後ほどもう一度改めて紹介したいと思いますが),2005年の追記で,「最近は検索エンジンで会社名を入力する人が多いから,ドメイン名は大事なことには変わりないけれど,以前と比べるとあまり重要じゃなくなっている」と書かれているので,欧米にしても,同じような傾向があるようです。

 携帯電話では,さらにURIを意識する必要ってなくなっています。携帯電話のブラウザにはアドレス欄すらありません。電車の中で広告に書かれたURIを入力する,といった場合はあるので「短い」ことは重要ですが,それ以外の場合にはほとんど意識することがありません。

URIを意識する瞬間とは?

 では,使いやすいURIはなぜ必要なのか,という話に戻ります。その必要性を整理する意味で,筆者の経験を元に,URIを「意識」する瞬間,というのはどういうときなのかを考えてみることにしました。

 まずは,ブラウザでどこかのページにアクセスしたときのことを考えて見ます。ページが表示されたとき,ブラウザのアドレス欄にはURIが表示されているわけですが,真っ先に目が行くのはおそらくページの内容です。そして,URIには意識が向かないまま,内容を読み終わってページを閉じてしまう,別のページに移動してしまう,ということも多いでしょう。

 それじゃあURIを見るのはどんなときかと考えると,ページの内容からその情報の発信元がよくわからない場合に,「このページはどこのサイトで公開されているんだろう」と思ってURIを見たりとか,「フィッシングサイトではないか」と思ってURIを確認する場合があります。ウェブ系のエンジニアをやっていると,「このページのURIどうなってるのかな」と思ってみることもありますが,これはちょっと特殊ケースですよね。

 それ以外でURIを意識するのは,例えば検索エンジンの検索結果で,アクセスしたいページがあったときに,URIを確認することがあります(いつもではありませんが)。どこかのブログのエントリなどでURIが直に書かれていたときや,インスタント・メッセンジャーなどで,知り合いからURIが送られてきたとき,なんていうのも,まずはURIが目に入りますから,そこから,それがどんなページなのかを類推したりします。

 ブラウザのアドレス欄に直接入力する場合もあります。頻繁にアクセスするURIであれば,それを覚えてしまって手で入力したほうが速い場合もありますし,検索エンジンからどこかのサイトの深い階層のページに直接アクセスしてしまった場合,URIを後ろのほうから少しずつ削っていって,上位のページにアクセスする,といったことをする場合もありますよね。また,URIを見ることで,自分がそのサイトのどのページにアクセスしているのか,ということを確認することもあります。

 そしてもう一つ,縦に長いページを見ているとき,どこを表示していても,URIは(アドレス欄さえ非表示にしていなければ)常に画面上に表示されています。と言うことで,表示されているURIが十分にわかりやすければ,ほかのページへの移動をURIから行うこともできます。

 そんな感じで,頻度は人それぞれでしょうが,やっぱりURIを意識するタイミングはあるわけです。何を当たり前のことを,と思われるかもしれませんが,URIについて考えるに当たって,そのあたりのことをきちんと踏まえていないと,どうにも前に進めない感じがしたので,お付き合いいただきました。ではURIの使いやすさの必要性をちょっと確認できたところで,使いやすいURIとは何なのか,ということに話を移していきましょう。

使いやすいURIとは何か