◆今回の注目NEWS◆

◎「IT新改革戦略評価専門調査会 2006年度報告書」公表(IT戦略本部、4月5日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ithyouka/index.html

【ニュースの概要】IT戦略本部は、4月5日に開催された第40回会合で「IT新改革戦略評価専門調査会 2006年度報告書」を公表した。医療と電子行政が「重点評価」の対象となっている。


◆このNEWSのツボ◆

 IT戦略本部から、「IT新改革戦略評価専門調査会報告書」が公表された。この報告書は、9名の委員からなる専門調査会が作成に責任を有するものだが、この調査会は、2005年末まで開催された「評価専門調査会」の流れを汲んで、IT戦略本部が打ち出す計画やプランの評価を行う機関である。前の専門調査会が2005年にとりまとめた報告書は、かなりの力作で、特に、以前は公表されていた、その付属資料は、IT政策に関する評価の集大成とも呼ぶべきものであった。

 今回の報告書は、評価対象が2006年に策定された「IT新改革戦略」だけということもあって、ボリュームは前回のものほどではない。今回の報告書では、特に医療と電子行政の分野を重点的に取り上げ、その課題は「BPR」「全体最適」「分かりやすさ」ということである。

 評価報告書の内容は、それなりのものである。ある意味大胆な提言も行われている。その一例は、個人認証に関する評価であろう。ここでは、現状の住基カード、公的個人認証のコストや使いにくさが、その普及を阻んでいるとして、「利用者が個人認証基盤のメリットを実感できるようにするための環境整備が必要である。(中略)既存公的個人認証サービスも含めた、高度な信頼性を有する個人認証基盤について、速やかかつ積極的な取り組みを行う必用がある。」と記されている。

 筆者の正直な所感を述べれば「その通り」である。しかし、ここで言われているようなことは、すでに住基カード制度の創設や、公的個人認証サービスが開始される時点で言われていたことではないのか?住基カード制度が創設・配布される時点で、利用要とに比べて使い勝手が悪いと考えられ、多方面から普及に疑問が呈されていたし、その住基カードを前提とした公的個人認証サービスにいたっては、直接の実施責任主体である地方自治体自体が、最初から腰が引けていたように思われる。

 この報告書でかかれていることは、至極ごもっとも……である。しかし、開始当初から、上記のように様々な疑問が呈されていた政策を「強引に実施した」ことの責任はどうなるのだろうか?民間企業であれば、最初から売れ行きに疑義が呈されている新製品の開発を強引に進めて、結果が失敗であれば、早急にその製品からは撤退し、開発者は、その責任をとる。当たり前である。こうした「政策の責任の所在と始末」が明確にならない限り、どのような立派な評価報告が出ても、より良い政策を企画実行していくことにはつながらないと思うのは、筆者だけだろうか。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。