写真1●携帯電話事業者各社のカタログには海外利用の案内がある
写真1●携帯電話事業者各社のカタログには海外利用の案内がある
 携帯電話が生活の一部になるにつれて,海外への旅行や出張時にも電話を受けたいという要望が大きくなっている。

 従来は海外で携帯電話を使うなら現地のレンタル携帯電話を使うのが一般的だったが,現在では日本国内で利用している端末を海外に持ち出し,電話番号も日本国内の番号のまま使える「国際ローミング」サービスが利用できる(写真1)。慣れた端末を海外でも使えるのは楽だし,電話帳などのデータをそのまま利用できるのも便利だ。

 世界的に見れば国際ローミングはそれほど珍しいサービスではない。ヨーロッパを中心に世界中で利用されているGSM(global system for mobile communications)方式では,以前から国際ローミングが可能だった。しかし日本では,GSM方式ではなく独自のPDC(personal digital cellular)方式を使っていたこともあり,同一端末を国内外で使えるサービスは長らく存在しなかった。

1台で国内・海外をカバーする国際ローミング

 1台で国内でも海外でも使える国際ローミング対応端末は,PDCからcdmaOneへと通信方式を変えたKDDI(au)が,2000年に発売したGLOBAL PASSPORT対応端末「C111SA」が最初である。cdmaOne方式は日本以外の国でも採用されていたが,各国で周波数の利用法などが異なるため,国内用端末をそのまま海外では使えなかった。GLOBAL PASSPORT対応端末は,滞在国のcdmaOne事業者に合わせて利用周波数などを調整する機能を持ち,端末側でエリア設定を行うことで海外でも使うことができる端末だ。KDDIはその後も定期的にGLOBAL PASSPORT対応端末をリリースしている。最新の対応端末は「A5514SA」である。

 一方,NTTドコモとソフトバンクモバイルは,PDCの次世代にあたる第3世代(3G)携帯電話の通信方式としてW-CDMAを採用した。W-CDMAは元々国際ローミングを視野に入れて開発された通信方式ではあるが,海外では3G方式への移行がなかなか進まず,依然としてGSM方式が主流である。そこで,ソフトバンクモバイルは旧ボーダフォン時代の2002年12月の3Gサービス(W-CDMA)開始と同時に,W-CDMAとGSMの両方に対応した国際ローミング対応端末とサービスの提供を開始した。NTTドコモは旧ボーダフォンに遅れること2年,2004年12月にFOMAとGSMの両方に対応したデュアル端末「N900iG」を発売し,単一端末による国際ローミングが可能になった。

 同一端末を同一番号で使える国際ローミング端末のほかに,別の端末を使うが日本国内と同じ電話番号を使えるいわゆる「チップローミング」というサービスもある。現在発売している3G携帯電話は,NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイルともに電話番号情報を書き込んだICチップを端末内にセットするようになっている。3社のカードともGSM方式で使われているSIM(subscriber identity module)カードの上位互換になっており,利用事業者の限定がかかっていないGSM端末にセットすることで,海外ローミングを行うことが可能だ。

 携帯電話事業者以外では,PHS事業者のウィルコムが,日本国内で使っている端末を台湾およびタイでそのまま使えるサービスを提供している。ただし,電話番号は日本国内の番号を使えるわけではなく,海外専用の「ローミング電話番号」を取得して使うことになる。日本で使っている電話番号のまま利用できる携帯電話事業者のローミングサービスとは異なるので注意が必要だ。取得には事前申し込みが必要である。