後輩エンジニアのOJTを任されて困っています。その後輩はささいなことで質問してきたり、僕の作業をじっと眺めていたりしますが、こっちも自分のことで手いっぱい。正直言って、うっとうしいんです。
(ソフト開発会社勤務、プログラマ/男性・28歳)

A: 自分の新人時代を思い出し 時には突き放せ

 よく分かります。私も,いくつかの会社で後輩の面倒を見なければならなくなった時には,「うざいなぁ」と密かに思ったものです。でも,そんな時は昔の自分を思い出し,なるべく丁寧に指導するようにしました。

 私がIBMの新人SEだったころ,ある先輩がアドバイザーとしてOJT指導してくれました。コンピュータの基礎をしっかり固められたのは,この先輩のおかげだと,今でも感謝しています。

 元々,一を言えば十を知るような人間は非常にまれです。あなた自身が優秀だったからといって,後輩にそれを期待するのは酷というものです。それに,きちんと育てた後輩は必ずあなたに感謝し,将来はあなたの助けになってくれるはず。実際,私が指導した後輩は,今でも私を慕ってくれています。

 では,時間の許す限り後輩のそばにいて,手取り足取り指導すべきかというと,必ずしもそうではありません。かえって,後輩の自立心を損ねてしまうかもしれないからです。ここはひとつ,先人の言葉に従いましょう。旧日本海軍を率いた山本五十六元帥の「やってみせ,言って聞かせて,させて見せ,褒めてやらねば人は動かじ」です。

 具体的に言うと,後輩に仕事を覚えさせる時にまず,自分自身がその仕事をやってみせます。次に,必要な情報を十分に与えたうえで,あとは後輩に任せます。この間,手出しはしません。いったん,突き放すわけです。こうして後輩に自分でやらせてみて,予定通りの成果を出せればそれで良し。ダメな場合には,何がどうしてダメだったかを教えるのです。たとえ全体としてはダメでも,少しでも良いところがあったらそれを褒めることを忘れずに。

奥井 規晶(おくい のりあき)
1959年神奈川県出身。84年に早稲田大学理工学部大学院修士課程修了。日本IBMでSEとして活躍後,ボストン コンサルティング グループに入社。戦略系コンサルタントとして事業/情報戦略,システム再構築,SCMなどのプロジェクトを多数経験。その後,アーサー・D・リトル(ジャパン)のディレクターおよび関連会社のシー・クエンシャル代表取締役を経て,2001年にベリングポイント(元KPMGコンサルティング)代表取締役に就任。2004年4月に独立。現在,インターフュージョンコンサルティング代表取締役会長。経済同友会会員,日本キューバ・シガー教育協会専務理事。