プロジェクトが佳境に入ると、会社に来なくなったり、連絡を絶ったりする部下がいます。何度もしかっているのですが、直りません。普段はやる気もあって、普通に仕事をこなしているのですが。どう対処すればいいでしょうか。
(Webインテグレータ勤務、プロジェクト・マネジャー/女性・40歳)

A: 「上司の税金」と思い 温かく見守ろう

 実は今,私も同じ悩みを抱えています。部下の1人が,肝心な時に必ず音信不通になるのです。何とか改善させようと随分しかりましたし,賃金体系も替えました。一度しかると数カ月は持つのですが,しばらくするとまた繰り返します。

 外資系企業の経営者だったころの私でしたら,彼のような部下は即座にクビにしたでしょう。それが一番,簡単な手段だからです。でも,私はそうはしないつもりです。問題行動を繰り返す部下を見捨てることは簡単ですが,まずは話を聞いてやろうと思うようになったからです。

 じっくり話せば,相手の心の奥底にある原因が分かります。実際,その部下は別に,さぼりたくてさぼっているわけではないのです。ただ,仕事のプレッシャが高まると,どうしても会社に足が向かなくなり,引き込もってしまうというのです。このように,話をよく聞けば彼の行動はある程度理解できます。

 とはいえ,顧客に迷惑をかけるわけにはいきません。いざという時は,私が彼の尻ぬぐいをする覚悟でいます。それが私の務め,いわば「上司の税金」だと思うからです。

 あなたもぜひ,部下の行動を理解し,最後までフォローする大きな器と,温かい心を持ってください。「そんなの割に合わない」と思うかもしれません。でも,「情けは人のためならず,めぐりめぐって己がため」。他人に温かく接していれば,将来それは必ず返ってきます。それでも納得できなければ,「できない部下をうまく使うことで,自分のマネジメント力を向上させられる」と考えてください。多少は気が休まります。

 ここまでやっても,どうにもならない部下だったら? 仕方ありません。切りましょう。

奥井 規晶(おくい のりあき)
1959年神奈川県出身。84年に早稲田大学理工学部大学院修士課程修了。日本IBMでSEとして活躍後,ボストン コンサルティング グループに入社。戦略系コンサルタントとして事業/情報戦略,システム再構築,SCMなどのプロジェクトを多数経験。その後,アーサー・D・リトル(ジャパン)のディレクターおよび関連会社のシー・クエンシャル代表取締役を経て,2001年にベリングポイント(元KPMGコンサルティング)代表取締役に就任。2004年4月に独立。現在,インターフュージョンコンサルティング代表取締役会長。経済同友会会員,日本キューバ・シガー教育協会専務理事。