写真1●NTTデータがまもなく出荷を始めるAsteriskベースのIP-PBXアプライアンス「astima」
 NTTデータはAsteriskベースのIP-PBXアプライアンスを開発している。2007年4月に出荷予定の「astima」である(写真1)。IP電話機が250台までつながり,価格は60万円程度だ。

 この開発を担当したのは,CTI(computer telephony integration)製品ブランド「VOISTAGE」を手がけている部署だ。開発担当の電話に対する考え方は,搭載機能に現れている。IP-PBXのほかIVR(自動音声応答機能),音声認識,ACD(自動呼分配機能),FAXサーバーといった“電話アプリケーション”を複数,標準搭載している。VOISTAGEプロジェクトの中渡瀬仁部長と西田晋也氏は,「従来のPBXにはあまり見られない機能で勝負するべき」と考えた。

 こうした位置付けで開発された製品が,企業の電話の使い方をどれだけ変えられるかは興味深い。簡単に使えるのか。IVRやFAXサーバーは一般企業にも使いこなせるものなのか,使われるのか。だれが販売やインテグレーション,サポートを提供するのか--。astimaの可能性や効能を探るべく,ベータ機の検証環境を借り,初期設定を施してIP-PBXとして動作させ,ACDやIVRを使ってみた。

IP-PBXが1時間10分で動く

図1●Webの設定画面を使って内線番号を追加する
[画像のクリックで拡大表示]
 VOISTAGEプロジェクトの中渡瀬部長は,「ブロードバンド・ルーターと同じような設定感を目指した」と話す。ユーザー自身がastimaを設定するケースを視野に入れている。外線接続はNTTの「ひかり電話ビジネスタイプ」のみ。Bフレッツで使われるNTTのルーター「BR500」の配下にすぐつながるIPアドレスが振られている。対応するIP電話機はサクサの「IP NetPhone SX」とNTTドコモの「N900iL」だ。

 動作環境は限定されているが,それがIP-PBXを起動するまでの初期設定の分かりやすさにつながっている。マニュアルを見ながら設定を進め,外線接続と内線設定,電話機接続に要した時間は,テストも入れて約1時間10分。FAXサーバーの設定を含めると約1時間半だった。無償配布されているAsteriskのソフトウエアを使う場合に必要なインストール作業,設定ファイルの作成・追記などはない。例えば内線番号の追加といった作業は,Web画面への入力だけで終わる(図1)。

ACDやIVRは「一般企業でも役立つもの」

図2●IVRの動作を設定する画面
[画像のクリックで拡大表示]
 ACDとIVRも試してみた。VOISTAGEプロジェクトの西田氏は,「これまでのIVRは,電話職人しか設定できないようなものが普通だが,これはWebで設定できる」と説明する。同社は,IVRはあらゆる業種に役立つと見ており,休日に電話をかけてきた人に休みであることをメッセージで伝えたり,緊急時に拠点から本社に通話を転送するような活用法があるとする。

 ACDを活用すれば,オペレータ数席の小規模なコンタクトセンターを構築できる。ACDは電話の呼を分配する対象の「オペレータ」,オペレータが電話を受けられる状態かどうかを把握するための「ログイン」といった概念に戸惑ったが,30分ほどで動作確認まで完了した。

 IVRは,astimaが搭載する音声認識機能と連携させて,本格的なシナリオを作れる。シナリオもWeb画面で設定していく(図2)。使い方によっては設定が複雑になる。「都道府県名を音声認識した際の処理を設定するとき,条件を入力するテキスト・ボックスに“神奈川”と“KANAGAWA”のどちらを入力すべきか」などの点で迷うことがあった。