アドビシステムズは3月19日に,labs.adobe.comにおいて,次世代アプリケーション実行環境「Apollo」のアルファ版の提供を開始しました(関連記事)。これまでWeb上のドキュメントやアドビの担当者のデモなどでしか情報を得ることができなかったApolloを,実際に触れられるようになったわけです。

 筆者はApolloアルファ版を早速,ダウンロードしました。この記事では,Apolloのインストールから簡単なサンプル・プログラム「HelloWorld」の作成,そして現時点でわかっているFlex/Flashには無い機能の概要を紹介したいと思います。

 記事の構成は,以下のとおりです。

1. Apolloって要するに何?
2. 前提条件
3. インストール
4. HelloWorldの作成;
5. Apolloアプリの配布とインストール
6. Flex/Flashには無い機能

1.Apolloって要するに何?

 Apolloを端的に言えば「Flash Playerをデスクトップ・アプリケーションのように動かすための実行環境」です。新しい言語でもなければアプリケーション自体を指すのでもないことに注意してください。今までもFlash Playerのスタンドアロン版からSWFファイルを実行することはできましたが,セキュリティ上の問題からローカル・ファイル・システムにアクセスできないなど,機能が非常に限定されていました。

 Apolloではスクリプト言語「ActionScript3」やVM(仮想マシン)自体が拡張され,Flex/Flashではできなかったことができるようになりました。Apolloについて,Adobe Labsに掲載されている図や説明をベースに筆者なりにもう少しわかりやすくしてみたのが図1です。

図1●Apolloの実行環境
図1●Apolloの実行環境
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 図1はとりあえずApolloのアルファ版でできることだけを図示しています。Adobe Labsの説明ではPDFを表示できると書いていますが,アルファ版ではできません。将来的にPDFを扱えるようになれば,用途の幅が広がって良いのですが,現状のPDFリーダーのように重たくならないことを切に願います。また,Apolloで動作するアプリケーションを開発するためのツールとして,アルファ版ではFlex用のプラグイン/SDKのみが提供されています。将来的には,Dreamweaver CS3,Flash CS3でも開発ができるようになるようです。

 ちなみに,Apolloというのはアドビが開発中の製品に命名したコードネームです。正式版がリリースされる時にはおそらく名前が変わると思われます(Apolloでは商標権を登録できないはずだからです)。とは言え,世界中でもうすでに,Apolloという名前でかなり普及してしまっています。

 例えば,米国のYahoo! GroupにはApolloCodersというグループができてしまっています。しかも,もうすでにかなりの投稿がありますし,米Adobe SystemsのApolloチームの方も参加しています。コードネームがこれほど普及するのは今までに無かったのではないでしょうか。それだけApolloに対する期待が大きいことを表しています。

2.前提条件

 Apolloアプリケーションを作成して稼動させるためには,いくつかの前提条件があります。

 まず,動作環境として,以下の要件を満たしていなければなりません。

Windows環境の場合
Windows XP(SP2),もしくはVista Home Premiumエディション
Macintosh環境の場合
Mac OSX 10.4.8が搭載されたPowerPC搭載Macintosh,もしくはIntelプロセサ搭載Macintosh

 さらに,アプリケーションを開発するためには,Hotfix1が適用されている英語版Flex Builder 2.0.1がインストールされていることが必要です(Flex Builderがアドビの開発ツール製品。コラム1「英語版Flex Builderについて」を参照)。日本語版Flex Builder 2.0.1を持っている人は,コラム2「日本語版 Flex Builder 2.0.1でApolloを使用する方法」を参考にしてください。

 なおこの記事で使用する画面のスクリーンショットはすべてWindows版です。Macintosh版と若干画像が違う場合がありますので,ご了承ください(Windows版のFlex BuilderはEclipse 3.1ベースですが,Macintosh版はEclipse 3.2ベースです)。