インディーズゼロは,ニンテンドーDS(任天堂)などの携帯ゲーム機用のゲームソフトを中心に開発を行っている,ゲームソフト開発会社です。オフィスは,緑の豊富な井の頭公園や,オシャレなお店でにぎわう吉祥寺にあり,スタッフ数は現在22名。「千年家族」や「しゃべる!DSお料理ナビ」といった一風変わったタイプのゲームソフトの開発を得意としています。
連載第4回のテーマは,「ゲーム業界への就職・転職を目指す方へ」です。就職・転職に関する疑問に,転職経験のある社員を含めた4人が回答します。この情報が,皆さんの就職活動にお役に立てれば幸いです。
まずは,今回初登場の2名のプロフィールからです。
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■質問・疑問にお答えします
──最初に,自分自身の就職・転職活動の経験を語ってください。
DRAGONこれは専門学生全体に言えることだと思うのですが,私が新卒時に中小メーカーの就職活動を開始したのは,2年目の9月ごろとかなり遅めでした。
この時期になると,期間も短く焦りますし,何よりライバルが多いので不利です。大手メーカーの募集は春から夏に多いこともあり,1年のときから就職作品を準備し,早めに就職活動を始めたほうが良いです。
転職時の経験では,一度に7社ほど応募したことがあるのですが,ほとんどの会社で書類選考で落ちたことがあります。
実績と何ができるのかが重要視されますし,小さな会社の場合では,時期によって新人を迎え入れる余裕が無い場合などもあるのではないでしょうか。就職活動では当たり前のことですが,とにかくめげずに活動を続けるしかないと思います。
MAK自分の就職活動は,初めて面接を受けに行ったのがインディーズゼロで,そのまますんなり入社の運びとなったために,ほとんど経験がありません。
インディーズゼロでの面接の印象としては,「あれ,こんなにトントン拍子に話が進んじゃっていいの?」と思うくらい順調に話が進んでいたので,内心ドキドキしていました。
KAT過去に2度ほど転職しています。自分の経験で話をすると,会社に受かったときは,いつも自然体で話が出来たときです。そういったときは相手にも好印象なのか,良い結果をもらえていると思います。
面接の前には,あらかじめ作品を履歴書とともに送ります。実際の面接での話題の中で,どれくらいの期間で作ったか,どんなところに力を入れたのか,苦労した部分…などがはっきり伝えられ,それについて面接官のプログラマの方と話が出来たのが良かったと思っています。
ちなみに作った作品は「3Dのパズルゲーム」「2Dのブロック崩し」「DOS窓用ファイルコンバータ」の3点で,これらを提出しました。
Dr.K最初の就職が,インディーズゼロの立ち上げだったので,就職/転職活動の経験はありません。どちらかと言えば,時には面接をする側の立場になるので,その中で感じたことを少し述べます。
当たり前のことですが,基本的には会社と就職希望者,双方の合意があって初めて採用となると考えています。
ポイントは“双方”ということです。面接とは,会社が就職希望者を面接する場であるとともに,就職希望者も会社を面接(=知る)する場であるということです。自信を持ってしっかりと自分をアピールするとともに,逆に会社の面接もしてやるんだ…という気持ちで堂々と面接に望んで欲しいと思います。
──入社して一番最初に担当する仕事は,どんな内容ですか?
DRAGON会社にもよりますが,インディーズゼロの新卒社員は,スクリプトやデータ作成をしながら,合間の時間でハードの仕様やライブラリの使え方を覚えます。
中途ならば,プロジェクトに慣れるために軽目の仕事から始め,すぐに他の社員と同じように働きます。私が初めて入った会社では,ハードの勉強をしながらグラフィックスまわりのライブラリ作成をしました。
KAT会社や忙しさなどによって変わると思います。弊社では,忙しいときだったらスクリプト入力の手伝いをしてもらったり,あまり忙しくない時期だったら,対象ハード用のサンプル・プログラムをいろいろ触ってもらうことになるのではないでしょうか。
──ゲーム・プログラマに向いているのはどんな人?
DRAGON何日か作業を続けないと画面に表示されなかったり,動作をしないような仕事もあります。コツコツと作るのが得意な人や集中力がある人が向いているのではないかと思います。
KAT一歩一歩着実に進むことが出来る人。どんな職業でも変わらない気はしますが。
Dr.K寝る間や食べる間を惜しんで,24時間頭の中がプログラムだらけだったことがある人,というのが一番向いていると思います。
基本的にプログラミングが好きでないと,納期や仕様によってはくじけてしまうかもしれません。しかし,そんな人は珍しいのが現状です。
もう一つ,どんな職業でも言えることですが,状況に気付いて変えようとすることができる人だと思います。
与えられた状況で「できません」と言うだけでなく,「どうすればできるのか」「できるとすれば自分はどう動いたらいいのか」を考えて行動できる人はゲーム・プログラマにも向いていますし,将来的にはもっと上の立場の業務もこなせる人になっていくと思います。
──では,向いていないのはどんな人?
DRAGON機械が苦手な人です。操作が苦手な場合はもちろん,どういう仕組みで動いているのかを大まかに想像できないと,プログラムの動作も想像できないからです。
そして,プログラマ以外でも当てはまることですが,プロジェクト終了直前は必ず忙しいので,ある程度ストレスに強くないと難しいです。同様に,神経質だったり飽きやすい人は向いていないかもしれません。
KATデバッグ終盤に大きなバグが出て,発売延期とか想像しただけで胃が痛くなる…といった,締め切りや商品に対するプレッシャーにストレスを感じる人は向かないと思います。
ゲームを純粋に楽しみたい人も向かないと思います。面白そうなゲームを買って遊んでいても,内部処理が気になったり,自分なら上手く出来るのにとか,自分では無理だなぁ…といったことを考えてしまうので,純粋に遊べないときが増えます。
Dr.K思考が簡単に止まってしまう人は向かないと思います。「できない」で終わってしまう人は,そこで思考が止まってしまって先に考えが及びません。
そういう人には責任ある作業は任せられずに,いつまで経っても同じレベルの業務しか行えない…ということになってしまいます。
ほかの人の行動を見て自分に置き換えつつ,しっかり考えて行動することができない人は,どんどん作業体系が変化していく中で,考えて仕事を進めていくゲーム・プログラマの仕事は向いていないかもしれません。
──IT系のプログラムとゲーム・プログラムでは,どんなところが違うのでしょうか?
DRAGONIT系のプログラムの仕事をしたことが無いのではっきりと言えるわけではありませんが,主に次のようなことではないかと思います。
- 最初の予定通りのものができるわけではない
- 仕様の変更が頻繁に発生する
- 大きな方向転換が発生する場合がある
- 画像を直に扱うことが多い
ゲームは,最初は完全な完成形が見えず,面白くなるように細かい仕様を突き詰め,時に変更し,必要に応じて新しい仕様を追加するといった作り方をします。IT系のように必要な機能やサービスが最初に見えていないことが,大きな違いではないかと思います。
KATIT系のプログラムは,データの入出力が重要であるのに対して,ゲーム系のプログラムはデータの入出力をいかに画面に表示して面白く見せるか(いろいろなデザイナが描いた画像を表示し動かすか)が重要といった部分が違うのではないでしょうか。
Dr.K一点目の違いは,ゲームは,リリース後に修正できないことだと思います。最近では,ネットワークでアップデートという手法も増えてきましたが,基本的にはお客様の手に渡ってしまった後は変更できません。そのぶん,不具合を出さない工夫,不具合が見つかっても対処し易い工夫,が求められます。
もう一つの違いは,見た目と触り心地が重視されることです。インタフェースなども必ずしも“美麗”である必要はありませんが,ユーザーが納得できるレベルに仕上げるには苦労します。
また「ボタンを押す」という処理にしても,ボタンを押してから処理に移る「間」などにも気を遣う必要があり,そういった細かい部分まで凝った作りを行うところがIT系とは違うところだと思っています。
──3Dプログラミング(DirectXなど)は重点的に勉強しておいたほうが良いでしょうか?
KAT最近は携帯ゲーム機でも3D表示ができるようになったので,勉強しておいたほうが良いことは事実です。
しかし,3Dプログラミングを重点的に勉強することよりも,もっと基礎になる部分,例えば,他人から見て見てわかりやすいソースコードの書き方とか,長期にわたって一つのゲームを作るのですからメンテナンス性に優れた書き方など,プログラムを書くうえで身に付けていないと困る部分をしっかり学んだほうが良いと思います。
最初から3Dが出来なくても,メニューなどの2D系の仕事をするうちに,ゲーム・プログラムの全体像を理解していくことができると思います。
Dr.K最近は3Dが主流なので,勉強するに越したことはないと思います。また,ライブラリの使い方だけではなく,そのライブラリが行っている処理の内容までを知っているとかなり楽だと思います。
どんなプラットフォームにしてもたいていライブラリが存在するので,言語が扱えてDirectXが使える程度のことは,誰でもできてしまうのが現状です。しかし,ライブラリには無い処理をしなければいけないことも往々にしてあるので,そういったときに3Dに関する本当の知識が非常に役に立つと思います。