フリー・エンジニア
高橋 隆雄

 オープンソースのAsteriskと,商用製品のAsterisk Business Editionの最も大きな違いは,サポートの有無と米ディジウム社による動作確認・保証があるかどうかという点です。またAsterisk Business Editionのライセンス体系もオープンソースのAsteriskとは異なります。なお,米ディジウム社(同社のWebサイト)は,Asteriskの開発者であるマーク・スペンサー氏が創業した企業で,Asteriskの主要な開発を担っています。

 今回のQ&AでAsterisk Business Editionを取り上げたのは,NTTソフトウェアが米ディジウムとのパートナー契約を発表し,同社のIP電話サーバー・システム「ProgOffice」にAsterisk Business Editionを搭載していることを公表したからです(関連記事)。

 米ディジウム社がリリースしている「Asterisk」は,以下の3つが存在しています。

(1)オープンソースのAsterisk
(2)AsteriskNOW
(3)Asterisk Business Edition

 (1)のオープンソースのAsteriskは,この特設サイトでも取り上げているいわゆるAsteriskのことです。http://www.asterisk.org/からダウンロードできます(関連記事)。

 (2)のAsteriskNOWは,(1)のオープンソースのAsteriskに管理ツール類を加えたもので,Asteriskの派生(ディストリビューション)の一つです。AsteriskNOWには,米アールパスのLinuxディストリビューションである「rPath Linux」も含んでいます。

 (3)のAsterisk Business Editionは,米ディジウムが商用製品として販売するソフトウエアPBXです。

 これら(1)(2)(3)の関係と機能などの違いを表1に示しました。大きな違いはサポートの有無と米ディジウムによる動作確認・保証があるかどうかといった点です。オープンソースのAsteriskと,AsteriskNOWは,基本的にユーザー自身でインストールしたり,設定したりするのが前提ですが,Asterisk Business Editionは米ディジウムの手厚いサポートを受けることができます。

表1●オープンソースのAsteriskと,米Digium製のAsteriskディストリビューションの違い
オープンソースのAsterisk AsteriskNOW Asterisk Business Edition
インストールと設定
「rPath Linux」ディストリビューション
容易なインストール・プログラム
設定ウィザード 次期バージョン
で対応
GUIでの一般的なPBX設定 次期バージョン
で対応
実行バイナリを含む
認証済みバイナリ、RPM、tarファイル
Asterisk eXpressサービス
パッケージ・メンテナンス・サービス 有償 追加料金での
オプション
カスタマイズ・サービス 有償 追加料金での
オプション
サポート
コミュニティによるサポート
Digiumによるインストール・サポート
Digiumによる問題解決サポート
プライオリティ・サポート 有償
週7日24時間サポート 有償
Asteriskテクニカル・マニュアル
Digiumサポート・ポータルへのアクセス
テスト/確認
復帰テスト
240通話までの動作確認
全てのDigium製カードでの動作確認
動作確認済みサーバと4つのLinuxディストリビューションでの動作確認
パートナーのIP電話、ゲートウェイ、カード等での動作確認
パートナーのソフトウェアでの動作確認
使用条件など
GPL
ソースコード 追加料金での
オプション
商用ライセンス
保証
損害補償
価格 無償 無償 有償(構成に
よって異なる)
Digium社のリスト(http://www.digium.com/en/products/software/comparison.php)
より抜粋。

 この違いは一見分かりにくいですが,オープンソースのOSであるLinuxにも同様の例が見られます。例えば米レッドハットは,Fedora CoreというオープンソースのLinuxディストリビューションを無償配布していますが,同社では「RedHat Enterprise Linux」という商用製品も販売しています。

安定性を求めるならBusiness Edition

 Asteriskにおける(1)(2)(3)の違いは機能の優劣ではなく,扱いの違いによるものです。オープンソース版は,世界中の多くの開発者の参加によって,先進の機能や改良がとても速いペースで取り込まれていきます。ただし,米ディジウムが動作保証をするわけではありません。ユーザー自身で動作検証する必要があります。

 これに対してAsterisk Business Editionは,米ディジウムが十分な動作検証をした上で販売されます。ユーザーが検証する必要はありませんが,その分先進的な機能の取り込みは遅くなることになります。

参考

 Asteriskの情報を入手するには以下のWebページを参照していただきたい。

(英語)
ディジウムhttp://www.digium.com/
Asteriskhttp://www.asterisk.org/
VoIP Info Wikihttp://www.voip-info.org/

(日本語)
筆者のVoIP Wikihttp://voip-info.jp/