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記者のつぶやき

「政府調達の基本指針」策定で,日本のオフィス・ソフトは変わるか

高橋 信頼=ITpro 2007/04/11 ITpro

 2007年3月,総務省は「情報システムに係る政府調達の基本指針」を策定した(関連記事)。2007年7月1日から適用される。

商品名ではなくオープンな標準を優先

 指針策定の目的は競争の促進によるコスト低減や透明性の確保である。大規模システムは原則として分離して調達すること,調達計画書の作成・公表を義務付けること,調達仕様書を明確化しオープンな標準に基づく要求要件の記載を優先すること,調達仕様書作成や工程管理に関わる事業者の入札を制限して公平性を確保すること,仕様変更手続などを契約書に明記し口頭による仕様変更など曖昧な契約を排除することなどが掲げられている。

 分離調達原則やあいまいな契約の排除など踏み込んだ記述がなされており,意図通り実行されれば政府の情報システムのコスト削減や有効性に大きな影響をもたらすものと思われるが,今回は,デスクトップ・アプリケーション,特にオフィス・ソフトへの影響について考えてみたい。

 その理由は2つある。ひとつは先日,Microsoft Officeからオープンソースのオフィス・ソフトOpenOffice.orgへ移行した企業の事例記事に予想を上回る多くのアクセスがあり,読者の関心の高さを改めて感じたこと。もうひとつは,特定ベンダーのソフトウエアが独占的なシェアを持つ典型的な分野だからだ。

オープンな標準の定義

 基本指針第3章のII項には「合理的な理由がある場合を除き、特定の具体的な商標名等を用いた要求要件を定めないこととする。具体的には、原則として、独自の機能、独自のデータフォーマット及び独自の方式を使用せず、国際規格・日本工業規格等のオープンな標準に基づく要求要件の記載を優先する」とある。「マイクロソフトワードと同等以上の製品」といった要件記述は原則として行わないということだ。

 代わって優先されるのが「標準規格XXXに準拠したデータの読み書きが可能な製品」といった要件記述だ。指針で言う「オープンな標準」とは「(1)開かれた参画プロセスの下で合意され、具体的仕様が実装可能なレベルで公開されていること、(2)誰もが採用可能であること、(3)技術標準が実現された製品が市場に複数あること、のすべてを満たしている技術標準」を指す。

 オフィス・ソフトに関するオープンな標準の代表格がODF(Open Document Format)である。ODFはOASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)が標準化したXMLベースのオフィス文書標準。OpenOffice.orgのXMLファイル・フォーマットをベースに策定された。2006年6月にISO(国際標準化機構)の標準になっており,指針にある「オープンな標準の要件を満たす」。OpenOffice.orgおよびその商用版StarOffice,一太郎,GoogleのWebワープロWritely,米IBMのWorkplace,オープンソースのKOfficeなどがODFをサポートしている。

 「ブラジルやオランダ,フランス,インドなど,政府がプロプライエタリな標準ではなく,オープンなODFを推奨する動きはツナミのように広がっている」と,Sun Microsytems Open Source and Standards EvangelistのGilles Gravierは主張する(関連資料「A Global View of ODF Policy」)。

政府調達本来のあり方に戻す

 Microsoftも“オープン化”を進めている。Office 2007のXMLフォーマットであるOpen Office XML(OpenXML)を公開しECMA(European Computer Manufacturers' Association)に提出。OpenXMLは2006年12月にECMA標準となり,現在ISO標準化のプロセスにある。ISO標準になれば,OOXMLもオープンな国際標準として調達基準になる。2007年3月に5カ月間の投票が開始され,早ければ2007年8月に結論が出る(関連資料,日本で審査の取りまとめを行っている情報処理学会 情報規格調査会 村田真氏のブログ)。

 しかし日本の政府調達指針の適用は2007年7月から始まる。OpenXMLのISO標準化は,順調に行っても7月に間に合わない。

 この点に関して総務省 行政管理局行政情報システム企画課では「例えばワープロ・ソフトであれば『日本語文書の読み込みと書き込み,印刷が可能で罫線機能をもつもの』といった,規格を指定することのない要件記述も可能」と話す。「目的はあくまで,ある特定の製品が有利にならないようにすること。調達の範囲を広げることが狙いで,ある製品を排除することが目的ではない」(総務省)。

 もともと,日本はWTOに加盟しているため政府調達では商標名を書かないことが原則である。例外規定で「製品Aと同等以上」といった表現が認められているにすぎなかったが,実際には例外規定であるはずの商標名を使った要件記述が大多数になってしまっていた。「それを本来の姿に戻す」(総務省)。

 Microsoftも,ODFも利用できるようにするための手を打っている。Microsoft Office向けのOpenXML/ODF変換アドオン・ツールである。Microsoftが開発しているのだが,なんとオープンソース・ソフトウエアとして,オープンソース開発者支援サイトのSourceforge.netで公開されている。

複数の現実的な選択肢がある環境を

 冒頭で触れたMicrosoft OfficeからOpenOffice.orgへの移行したアシストの事例では,約700台を移行したことにより,順調に行けば3年間で約1700万円のライセンス料が削減できるという。ただしユーザー・サポートのための人件費なども発生しており,1700万円がすべてコスト削減になるわけではない。

 重要なのは,多数の選択肢があることだ。コストを優先するのか,機能を優先するのか。ユーザーの目的に応じた,かつ現実的な選択肢が存在してほしい。

 ユーザーが作成したドキュメントはユーザーの資産であり,そのためにベンダー・ロックインが発生してユーザーの自由を封じるのは本来の姿ではない。ましてや省庁が国民から文書を受け付ける際に,プロプライエタリなファイル・フォーマットのみを指定し,特定のベンダーのソフトウエアの使用や購入を要求,あるいは推奨するといったことがあってはならないだろう。今回の調達指針が,ユーザーに選択の自由がある環境を作るための契機となることを期待している。

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