三浦 雅孝 アイ・ピー・ビジョン
CTO
三浦 雅孝

「Spring VON 2007」が3月19~22日に米国サンノゼで開催された。Linuxをはじめ、オープンソースの「Asterisk」の導入に必要なソフトウエア群をパッケージ化した「AsteriskNOW」が紹介され、来場者の注目を集めた。TV電話関連の端末やソフトウエア、サービスが多く出展されていた。「SIP=標準」を感じさせるイベントであった。

 今回は3月19~22日に米国サンノゼで開催された「Spring VON 2007」をレポートする。VONはVoIPに特化したトレード・ショーで、SIP関連の商品やサービスが最も多く展示される(写真1)。200社を超える企業の展示と50以上のコンファレンスがあり、8000人を超す来場者があったと報告されている。筆者は昨年に続いて、2度目の訪問となる。

写真1●「Spring VON 2007」会場(San Jose Convention Center)
写真1●「Spring VON 2007」会場(San Jose Convention Center)

 展示会場では、オープンソースのIP-PBX「Asterisk」関連の製品を出展する米Digiumが大きなブースを構え、TV電話や携帯電話に関連する展示が目に付いた。昨年春のVONではまだH.323ベースのシステムなどが数多く展示されていた。しかし、今年のVONでは、H.323はすっかり姿を消していた。「SIP=世界の標準」の表れであろう。

Linuxまでも組み込んだソフトウエア「AsteriskNOW」に人気

 今回の展示で最大規模のブースを構えていたのが、米Digiumである。DigiumはオープンソースのPBXソフトウエアであるAsteriskを開発、提供していることで有名である。もともとはPSTNゲートウエイなど、電話関連のPC用ボードのメーカーである。そのDigiumが開発したAsteriskが、VoIPの波に乗り、オープンソースIP-PBXのスタンダードとなった感がある。

 同社のブースで、最も人を集めていたのは、「AsteriskNOW」のオープンシアターである。AsteriskNOWは、Asteriskに、インストーラとGUIベースの設定ツール、カスタマイズしたLinuxをセットにしたソフトウエア。そのため、ソフトウエア・アプライエンスと称している。Asteriskの基本設定、ボイス・メールや会議、内線番号計画などをGUIで設定できる。これまではコマンド・ベースで設定する必要があった。

 シアターでは、このAsteriskNowのインストールからGUIによるシステムの設定方法までをかなり詳しく解説していた。30人程のイスが用意されていたが常に満席で、シアター後方の通路に座り込み熱心にメモを取る観客もいる状況であった。会場では、無料のCDを配布していたが、Webサイトからダウンロード可能である。

 このほか、Asteriskに加えて、クイックスタート・ガイドやテクニカル・マニュアル、サポート、アップデートなどをすべてセットしたパッケージ「Asterisk Business Edition」の展示コーナーも人気を集めていた。オープンソースを自らインストールし、設定するにはかなりの技術力が必要であり、このようなサポートまで一体にしたパッケージが注目されるのも納得できる。

コンパクトなTV電話端末を出展

 米8x8は、Packet8というSIPベースのインターネット電話サービスを提供しているインターネット電話サービス・プロバイダ(ITSP)である。アメリカおよびカナダで、固定電話番号をそのまま使えるインターネット電話サービスを提供している。月額24ドル99セントの固定料金でかけ放題のサービスである。また、月額49ドル99セントを支払えば、国際電話もかけ放題になる。

 同社のブースでは新製品であるTV電話端末「Tango(VTA464)」をデモしていた(写真2)。5インチのTFT液晶を搭載し、コンパクトにまとめられている。すべての操作は前面のカーソル・キーでできる。USBポートも実装しており、マウスやキーボードを接続できる。プロトコルはもちろんSIPで、ビデオ・コーデックはH.263とH.264に対応している。ルーター機能を内蔵しており、WAN側コネクタとLAN側コネクタを実装している。ハンドセットが必要な場合は、通常の電話機を背面の電話ポートに接続して利用する。

写真2●Packet8のTV電話機「Tango」
写真2●Packet8のTV電話機「Tango」
右の写真は、ブースで配られていたTangoのパンフレット。

 実際に同社のオフィスと接続して、通話をしてみた。ビデオの帯域を、カーソルで自由に選択でき、256kビット/秒程度の帯域を選択すれば申し分ない画質が得られた。残念なのは、この端末は同社のサービスに加入しないと購入できないことだ。