マイクロソフトがSQL Serverに標準搭載しているビジネス・インテリジェンス(BI)機能は,他の競合製品にはない重要な機能である。また企業におけるBIの重要性も,マイクロソフトによる単なる誇大宣伝ではないだろう。しかし,米国「SQL Server Magazine」と「Windows IT Pro Magazine」が行った読者調査でも,企業におけるBIの導入率は低水準に留まっていた。
BIテクノロジとは,企業がデータからより多くの情報を導き出すことを支援する手段である。企業に蓄積されたデータを分析して,顧客が誰なのか,顧客の習慣や好み,購入履歴や購入頻度がどうなっているのかを分析することによって,企業は競争上の優位性を得られるようになる。SQL Serverも,10年以上前からBIとの連携を目指していた。それでも,BIは依然として広く採用されているというにはほど遠い。多くの企業とデータベース専門家が,BIに価値を見出しておらず,BIを使わなくても何の問題もないと考えている。
SQL Server Magazineの「Instant Poll」の結果と,Windows IT Pro Magazineの「Information Technology Customer Research(ITCR)」パネルの調査では,BIテクノロジの採用は,多くの組織にとっては依然として,良くても「将来の目標」に留まっていることが明らかになった。Windows IT Pro MagazineのITCRパネルの回答者の中で,現在BIテクノロジを使用していると回答したのはわずか22.2%であった。21.6%の回答者は,将来のプロジェクトでBIテクノロジを使用する可能性があると回答している。しかし,最も多かったのは,BIを現在使用していないし使用する予定もないという回答であり,39.7%を占めた。残りの16.6%は,BIテクノロジを必要としていないと回答している。
SQL Server Magazineの読者の多くは,SQL Serverの使用経験があり,知識も豊富であると考えられるが,同誌のWebサイトで実施された「Instant Poll」でも同様の結果が示されている。恒常的にBIを使用しているという回答者は32%で,ちょうどBIを使い始めたという回答者も32%だった。しかし,36%の回答者はBIが何か知らないか,どうすればBIを使えるのかが分からないと回答している。
BIの導入は,既にSQL Serverを使っていて,そのリレーショナル・テクノロジにどっぷり浸かった組織にとっては困難な作業である。データベース専門家が現在のプロジェクトの対応に忙殺され,新しいテクノロジを受け入れたり,本腰を入れて取り組んだりできない場合も多い。
BIとデータウエアハウジング・テクノロジは,従来のリレーショナル・データベース・テクノロジとはまったく異なっている。もちろん,それまでにデータベース管理者として培ってきたスキルやツールを使わなくなるわけではない。これまで培ったスキルの上に積み上げていくことになる。ただし,BIのファクト・テーブルとディメンション・テーブルに採用されているデータベース設計概念は,リレーショナル・データベース設計者が取り組んできた第3正規形とは大きく異なっている。また,クエリ・キューブで使われるMDX言語も,懐かしいT-SQLとはまったく異なる言語だ。このような基本的な相違が存在するため,開発者やデータベース管理者は簡単にBIに移行できない。どちらも同じデータベース・サーバーかもしれないが,これまでとは異なる,まったく新しいスキルを習得しなければならないのだ。
幸いなことに,BIを使い始めようとするデータベース専門家を支援する目的で設計されたリソースは豊富に存在する。BIを学習する最善の方法の1つが,Microsoftが新しく提供するBI動画(英語)と,Kimballグループが提供するWebcast(英語)を視聴することだ。また,今後発行されるSQL Server Magazineでは,「Solutions by Design」という連載でMichelle A. Poolet氏がBIとデータウエアハウジングの設計について取り上げる予定である。