図●10個のITキーワードが日本企業に影響を与えた時期。2007年2月調査。単一回答。キーワードを認知していない回答,キーワードが影響を与えたこともなければ,今後も影響を与えないとした回答,無回答を除く。出所は日経BPコンサルティング。
図●10個のITキーワードが日本企業に影響を与えた時期。2007年2月調査。単一回答。キーワードを認知していない回答,キーワードが影響を与えたこともなければ,今後も影響を与えないとした回答,無回答を除く。出所は日経BPコンサルティング。
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 「今が旬の言葉はSOX法,旬を過ぎた最も“古い言葉”はSIS」──。

 これは,日経BPコンサルティングが2007年2月に実施した調査からの結果です。その調査とは,日経BP社が発行するIT専門雑誌に,1980年代以降に登場したITキーワードを10個抜粋し,日本企業に最も影響を与えた時期を「ITpro Researchモニター」に尋ねるというものでした(日経マーケット・アクセスのページ)。設問では,各ITキーワードについてそれぞれ最も旬だった,あるいは旬だと思う時期を「1989年以前」から「2010年以降」までの八つの選択肢から回答者に選んでもらいました。

 その結果,SOX法(サーベンス・オクスリー法)は2003年以降を旬に選んだ回答者が9割を超えていたのに対して,SIS(戦略情報システム)は4割以上の回答者が旬は1999年以前と回答し,2005年以前ではその割合が8割を超えていたのです(図)。

 確かに,SISという言葉をよく聞いたのは1990年代のことでした。当時は,企業のトップが経営戦略を立案し,システム部門がそれを実現する情報システムを構築するというトップダウン型のアプローチを取ることが一般的でした。しかし今や,経営に情報システムを活用することは当たり前。むしろ,ブログ/SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を企業内で利用しようという動きが活発になるなど,現場に埋もれている情報/知識をボトムアップ的にいかにうまく活用して業務改善につなげていくかという点などに主眼が移っています。

 しかしだからといって,SISの概念そのものが不要になったわけではないでしょう。SISの代表のように言われていたヤマト運輸の荷物追跡システムは,今や各社が実装しています。SISは,当たり前すぎてもはや言葉としての存在価値がなくなったということです。文字通り“旬”が過ぎたのです。

 このように「キーワード」には,“はやり廃り”があります。

 以前は旬だったキーワードが,影も形もなくなるという事態も起こり得ます。例えば,2002年にNTTが提唱した「RENA(Resonant Communication Network Architecture)」。通信/ネットワーク系を専門としていた筆者にとっては,なじみ深いキーワードだったのですが,一般の方はあまりご存じないかもしれません。RENAとは,NTTの構想「“光”新世代ビジョン」を実現するための新しい通信サービスと通信ネットワークの総称のことです。レゾナントとは「共鳴する」という意味で,当時NTTはこの言葉を好んで使っていました。通信/ネットワーク系では比較的重要なキーワードでした。

 ところがNTTは,2005年ころからRENAというキーワードを使うのをやめてしまいました。レゾナントという言葉は,現在では,ポータルサイト「goo」を運営しているNTTレゾナントという会社の社名に残っているくらいでしょうか。しかしNTTは,決してRENAという言葉で表していた新世代ネットワーク構想を捨てたわけではありません。むしろそれを加速させています。RENAに代わって登場したのは,「NGN(Next Generation Network)」というキーワードでした。RENAはNTTが提唱していたものですが,NGNは世界共通のキーワードです。RENAはNGNへと変わることで,発展的に消えていったと言えるでしょう。

 さて,なぜ今さらながら,このようなことに思いを馳せているのかというと,ITproが3月1日に実施したリニューアルにより,ITキーワードを集めた「ITpro Keyword」をスタートさせたからです。ここでは,これまでITpro内でバラバラに記事化/連載してきた新旧,様々な分野の「キーワード」を一堂に集め,横断的な検索やリスト表示を可能としました。分野としては,IT経営用語,Windows,Network,プログラミング,電子行政,無線ICタグなど多岐にわたっています。

 キーワード記事といっても,単なる用語説明とはひと味違います。かなりしっかりとした解説を施してあるのが特徴です。RENAのような“古い”キーワードもありますが,もちろん最新キーワードもあります。ほぼ毎日,新しいキーワードが追加されています。お時間のあるときにでも,ぜひのぞいていっていただければ幸いです。