筆者は1月31日,米国ニューヨークで開催された大規模なWindows Vista発売記念イベント(The WOW starts now!)を見終わって,ニューヨーク市内のホテルの部屋に戻ろうとしていた。部屋のある階にエレベーターが着こうとする直前に,筆者はイベント中に紹介された「Vistaファミリー」の一員が隣に立っていることに気づいた。Microsoftは2年前に,一般家族がVista開発チームの密接な監督の下で同製品をテストする「Life with Vista(Vistaのある生活)」プログラムのために,50組のボランティア家族を選んだ。Microsoftによると,これらの家族はテスト期間中に800個以上のバグを発見して,いくつかの新機能を生むフィードバックを返したそうである(ただしフィードバックが結実した具体的な実例は,写真用の「Burn to CD(CD作成)」機能がVistaに搭載されたことだけであった)。

 いずれにせよ筆者は,「Life-with-Vista(Vistaのある生活)」に参加した母親と娘にエレベーターで遭遇し,15秒間だけ質問する機会を得た。Vistaのクールな機能を利用するのがいかに簡単であるかを示す発売記念デモンストレーションを見ている間,筆者はずっと自分の姉(あるいは妹)のことを考えていた。彼女は,F1レースカーを扱うのと同じように,コンピュータを扱う専門家である。つまり,非常に慎重にコンピュータを使うということだ。彼女は,たとえFlip 3Dを使うことによって大量の予防接種記録を検索する生産性が上がるとしても,そういった機能の使い方を理解しようとするだろうか? そんなことは絶対にありえない。

 筆者はこの考えを念頭に置きつつ,「Vistaの登場によって,テクノロジに詳しくない人がコンピュータを理解し使用するのが本当に簡単になると感じたか」と「Life-with-Vista(Vistaのある生活)」に参加した母親と娘に尋ねてみた。母親は質問に答えるのをためらった。その→後,彼女は十代前半の娘の方にうなずいて,次のように言った。「娘がコンピュータを使う頻度ははるかに高くなったわ」。うーん,Microsoftの直接の監督下で2年間Vistaを使用したにもかかわらず,「その通りよ。私はVistaを使ってありとあらゆる素晴らしいことをやっているわ」という言葉は,その母親の口から出てこなかった。

 それ以上のことを尋ねる時間はなかったため,その母親の間接的な答えが,Vistaを使用,展開,そしてサポートすることになる人々にとって何を暗示しているのか,筆者は不安に思っている。筆者はVistaのことを,画面が綺麗で,自分の仕事の役に立つ上に,使っていて楽しいと感じている。だが筆者の姉(もしくは妹)のようなユーザーがVistaを見て,新機能を試しに使ってみようという気になるとは思えないのだ。姉(もしくは妹)の会社のシステム管理部門は,どうやったら彼女が移行する負担を軽減できるだろうか?そしてどのように彼女に働きかけて,Vistaを使って自らの生産性を向上させる方法を見つけよう,という気にさせるのだろうか?ユーザーに力を与えたり,ユーザーをサポートするITプロフェッショナル(システム管理者)の助けになったりするアドバイスには,どのようなものがあるだろうか?

 われわれは,企業のITプロフェッショナルに対して,このような情報を提供して行かなくてはいけないと思っている。ユーザーやITプロフェッショナルがVistaに対して抱いている不安を少しでも軽減することが,われわれの役割だと思うのだ。

 そこでまずは,Vistaを組織内に展開する人なら絶対に知っておかなければならない,と筆者が考えているリソースを紹介させてほしい。その後で,筆者が気に入っている機能についてお話しよう。

 Microsoftの「Business Desktop Deployment (BDD) Solution Accelerator」を知らない方は,まず以下のURLを訪れてみてほしい(日本語の情報:「クライアント PC の展開プロセス概要」)。

 BDDはWindows XP発売時にはあまり普及していなかった,ガイドとツールで構成される巨大なコレクションだ。Microsoftによると,BDDはITプロフェッショナルが次のことを行うのを可能にするそうだ。「ソフトウエアとハードウエアのインベントリを作成して,展開計画に役立てる。アプリケーションの互換性をテストして,そのプロセス中に発見された互換性問題を緩和する。展開サーバーとイメージング・サーバーで構成される,初期ラボ環境をセットアップする。アプリケーションのカスタマイズとパッケージングを行う。デスクトップ・イメージの作成と展開を自動化する。環境内でデスクトップのセキュリティを確実に向上させる。プロセスとテクノロジを管理して,包括的で統合された展開を実現する」

 この機能の豊富さは素晴らしい。だがそれは同時に,サイズが膨大なことも意味している。だからダウンロードに時間がかかることは覚悟しておいたほうがいい。Vistaの新しいツールで具体的な展開タスクを行う方法について情報を知りたい方は,John SavillのFAQ(英語:Windows Tips & Tricks UPDATE--January 29, 2007)でこの話題に関する部分を参照するといい。

 筆者がエンドユーザーとして,現在最も気に入っている機能は「ReadyBoost」である。USBドライブをコンピュータに差し込むと,ReadyBoostはそのストレージを追加のRAMとして,頻繁に使用するファイルやアプリケーションのキャッシュのように使用するのだ。これはVistaコンピュータの速度を上げるための,安くて簡単な方法だ。