オラクルによるピープルソフト買収劇はまだ記憶に新しい。その当事者であるピープル創業者率いる新会社「ワークデイ」が2006年1月に始動した。08年にも日本に進出する。「旧世代のERP製品では顧客のニーズに応えきれない」と“宿敵”に挑戦状をたたきつける。

 米ワークデイが06年から07年にかけて提供するのは、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)「Workday Enterprise Business Services(EBS)」である。06年11月6日に人事管理の「Workday Human Capital Management(HCM)」を提供。続いて、会計管理、資源管理、収益管理を追加していく。

 Workday EBSが対象にするのは、従業員数1000~5000人規模の中堅・大手企業。ネットワーク経由で利用するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供していく。主要機能がそろう08年にも、米国以外の日本や中国などに進出する計画だ。

写真●打倒オラクルに挑む、米ワークデイのデビッド・ダフィールド共同創業者兼CEO
写真●打倒オラクルに挑む、米ワークデイのデビッド・ダフィールド共同創業者兼CEO

 「08年には、米オラクルや独SAPに追い付く」。ワークデイの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるデビッド・ダフィールド氏(写真)は、こう宣言する。特に同氏が意欲を燃やすのは、オラクルとの闘いの“第2幕”に打ち勝つことだ。ピープルソフトを1987年に創業した同氏は99年に同社を離れたものの、03年にオラクルによる買収劇が勃発したのを機に、当時のピープル取締役会からの要請で04年10月に同社CEOに復帰。しかし05年1月に、オラクルがピープル買収に成功したことで幕を閉じた。

 だがダフィールド氏にとって、ピープルへの復帰は無駄ではなかった。このときに、「ビジネスの変化に柔軟に対応できる、新たなERP製品が必要とされていることを理解した」(同)からだ。そこでERPを新たに開発するために、旧ピープルの経営陣や技術者を中心にワークデイを立ち上げたのである。

 Workday EBSの最大の特徴は、徹底的にSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づいて設計されていることだ。データ・モデルを含むアプリケーション全体をオブジェクト指向に基づいてモデル化し、その結果を業務視点でまとめた「サービス」として利用する。サービス同士を連携させるミドルウエアとして、米ケープ・クリア・ソフトウエアのESB(エンタープライズ・サービス・バス)製品を使っている。

 「オラクルやSAPは、ミドルウエアのレベルでSOAを実現しようとしている。だが、『経営スピードや変化にシステムを効率よく追従させたい』という顧客の要望に応えるには、基幹業務をつかさどるアプリケーションそのものを柔軟な構造にするのが不可欠だ」と、ダフィールド氏は主張する。

 Workday EBSでは、使いやすさも重視している。ラジオボタンといった機能を使い、利用者自身が業務プロセスなどを変更できる。「業務上の急な変更に対応するには、実際の利用者が変更できるのが望ましい」(ダフィールド氏)との考えからだ。そのために、AjaxなどのWeb 2.0の技術を採用した。さらにマイクロソフトと提携し、07年にOutlookやSharePoint Serverなどと連携可能にしていく考えだ。

 アプリケーションとしての完成度にもこだわる。「特に人事管理の機能は、ピープルでの経験を生かして実現したので、既存製品に引けを取らない」と、ダフィールド氏は自信をみせる。オラクルがSOAに基づくERP製品「Fusion Applications」を投入するのは08年。このときに、真の意味で第2幕の闘いが始まることになる。