ITの専門家は,顧客に対してもっと分かりやすく,一貫性のある説明をしなければならない--。筆者は先日,親戚の会社に起きたトラブルに立ち会って,そのことを痛感した。技術に明るくないユーザーにコンピュータを使用してもらうために,ITの専門家がしなければならないことは,まだまだたくさんあるようだ。

 筆者は先日,ある親戚から「パソコンに保存された電子メールを復元してほしい」と要請されて,その手伝いをした。彼女は10名ほどの従業員を抱える小規模な企業を運営している。筆者は親戚を対象にしたコンサルティング業務はしないようにしているのだが,今回は引き受けることにした。というのも,彼女の会社のコンサルタントが退職したからである。この事例は,ただ単に電子メールが紛失しただけという問題ではなかった。彼女のシステムはかなりのダメージを負っていたのだ。Windowsは起動しないし,Outlook Expressに保存されているデータを回復する必要性以外にも,非常に多くの問題があった。だがこのことは,今回のコラムの要点ではない。

 筆者が彼女のデータ回復に取り組んでいると,彼女はふとある質問をした。「他の従業員がしているように,自分も電子メールのメッセージをWebで見たいのに,どうしてもそれができない」というのがその内容だ。少し調べてみると,その会社の従業員は社長と同じ電子メール・サーバーを使っているのだが,彼らのうち3分の2がWebインターフェースを使ってISPがホストしているメールにアクセスしていることが分かった。残りの従業員は,POP/SMTPを使ってメールをクライアントにダウンロードするようにOutlook Expressを設定していた。

 実は彼女と,彼女の会社の従業員は同じISPの電子メール・サーバーを使用していた。よって,彼女も本来は,Webインターフェースが利用できたはずなのだ。しかし彼女は,この問題をコンサルタントにこれまで質問していなかったし,コンサルタントもこのことを彼女に一度も説明しなかったようだ。彼女が「自分だけWebインターフェースを使えない」と悩んだ背景には,コンサルタントの説明不足があった。

 筆者が調べてみると,どうも彼女が会社を起こした頃は,彼女が利用していたISPはWebベースの電子メール・アクセスを提供しなかったので,コンサルタントは彼女のためにOutlook Expressの設定を行ったようだ。そして約1年後,彼女がビジネスを拡大し始めたとき,前述のコンサルタントは新規ユーザーに対してはInternet Explorer(IE)を使ってISPのメール・サービスを利用するように,安易な指導をしていたのだ。

 彼女は何年もの間にわたってビジネス用コンピュータを使っていたが,コンピュータの仕組みについては十分に理解していなかった。「これからは,IEだけを電子メール・アプリケーションとして使っても大丈夫なの?」と彼女は筆者に尋ねた。電子メールの利用状況に関して彼女と話した後,筆者は彼女が事務所だけでなく自宅でもWebベースの電子メール・アクセスを利用できるように,Webメール・サービスへのリンクをセットアップした。彼女の会社には一貫したバックアップ・ポリシーが欠如している(このことについて話し始めると長くなるので,やめておこう)ことを考えると,ビジネス関係の電子メール・メッセージはISPのサーバーに残しておいたほうが合理的だからである。ISPのサーバーだと,電子メールはある程度保護される。さらにこのセットアップによって,それぞれのユーザーが全く同じプロセスによって電子メールにアクセスすることが可能になる。結果として状況は簡素化され,将来的に起こりうる問題が一つ取り除かれるだろう。

 この経験によって筆者は,多くのユーザー,特に非テクノロジー分野の小企業のユーザーがコンピュータについていかに無知であるかを把握できた。もし全てが期待通りに上手く動いてくれたら,ユーザーはより多くのことを学習する必要性を感じないだろう。そして問題が発生したら,彼らは適切なスキルを持つ人を雇う。だが企業のオーナーが自分の雇った専門家が何をしているのか全く理解していないという状況や,一部のコンサルタントが抱いている「自分たちが行ったことを記録したり説明したりする必要はない」という誤った感覚のせいで,新しいコンサルタントを呼んで問題を解決してもらうときに困難が生じていることを悟ったのだ。