日立コミュニケーションテクノロジー
営業統括本部
ネットワークソリューションセンタ
ソリューション営業推進部 主任技師
藤田 卓也 日立コミュニケーションテクノロジー
営業統括本部
ネットワークソリューションセンタ
ソリューション営業推進部 主任技師
藤田 卓也

IP電話を、電話を超えたシステムとして提案するのが多くなっている。しかし、システムの基本的な構成、使い方は提案するものの、そのユーザーの業務に最適な活用方法はユーザー自身が気づくことが多い。実際、カメラを使ってテレビ会議や監視システムが実現できると提案していたら、意外な使い方をユーザーが言い出した。

 IP電話の使い方の提案を求められることが増えている。ユーザー企業からのRFI(情報提供依頼書)には当たり前のように、「業務を改善し生産性向上の実現を目指す」「コミュニケーション改革実現を目指す」といった記述がある。しかし、「○×業務を改善する」といった具体的な業務改善案が示されることはまだ少ない。

図1●マルチメディア・コミュニケーション
図1●マルチメディア・コミュニケーション
 そのようなユーザーに対し、電話の置き換えではなく、マルチメディア・コミュニケーション・システム(MMCシステム)としてとらえることを提案している。TV会議や監視カメラや、複数のユーザー間でデータを共有できるアプリケーションを利用できるシステムなどを含めたコミュニケーション・ツールとして考えることである(図1)。

 MMCシステムのほうが多様な使い方ができるため、当然、業務の改善につながる可能性が高い。このような環境をユーザーに説明するが、なかなかイメージできない。そこでほかのユーザーの事例を紹介する。しかしほとんどの場合、「うちとは状況が違う」「うちの社内では使ってもらえない」「その部分は困っていない」という反応がほとんどである。

 確かに、同じ業種の会社であっても、全く同じ仕事をしているわけではないし、抱えているコミュニケーション不足の問題はそれぞれ違うのが当たり前である。

 そこでMMCシステムの導入環境を体感してもらうことにしている。自社に招き、実際に見て触って使ってもらう。するとどうであろう、ユーザーから、コミュニケーション不足が原因で業務に支障が出ているというケースがどんどん出てくる。

 たとえば、稟議(りんぎ)承認業務。紙ベースから電子化(グループウエアを利用)に移行した企業があった。稟議内容に問題がないものは承認のスピードが速くなった。しかし、少しでも問題がある場合、決裁者が安易に差し戻ししてしまう。従来なら、机の前に呼び出し、簡単な打ち合わせで稟議を進めるようなことであっても、マウスで「差し戻し」ボタンを押下してしまうのである。電子化したことでコミュニケーション不足が起こり、稟議承認が遅くなってしまった例である。

 また、拠点が離れているため起こるコミュニケーション不足は多い。多店舗展開しているユーザーでは、店舗の営業と技術者のコミュニケーション不足に悩まされていた。現在は、各店舗に技術者を配置して問題を解決しているが、営業サポート力を均等にするためには、技術者を一カ所に集めることが望ましいという。

 ユーザーの問題がわかれば、こちらも新しい「使い方」を提案できる。すでに導入し利用しているほかの「使い方」の事例を応用すれば、ユーザーが納得できる新しい「使い方」のアイデアが浮かんでくる。ときには、ユーザーが「あっと驚く使い方」を提案することもある。やはりユーザー自身が業務を知っているわけで、MMCシステムというツールがわかってくれば効果的な使い方が見えてくる。