突然だが,問題である。次の「業界用語」の意味が分かるだろうか。

○(マル,証券業界)
建玉(タテギョク,証券業界)
1本(証券業界)
現先(ゲンサキ,証券業界)
チャージバック(クレジットカード業界)
EMV(クレジットカード業界)
登録型加盟店(クレジットカード業界)
第三分野商品(保険業界)
GNP(生保業界)
LINC(生保業界)
ART(Alternative Risk Transfer)(損保業界)
クレーム(claim,損保業界)
e-JIBAI(イー・ジバイ)(損保業界)
種まきと摘み取り(コンビニ業界)
買取商品と委託商品(コンビニ業界)
エンド(スーパー業界)

 いかがだろう。特に○や1本,現先,クレーム(ちなみに苦情とは意味が異なる),種まきと摘み取りなど,さっぱり意味が分からないのではないだろうか(もちろん,その業界に詳しいエンジニアは別だが)。

 上に挙げたような業界用語などの業種・業務知識は,レベルは別にして,その業種・業務のシステム開発プロジェクトにかかわるすべてのITエンジニアが備えておくべき「コアスキル」である。例えば,インフラ系のエンジニアが業種・業務知識を備えていれば,自発的に業務に合ったインフラを提案できるし,プロジェクト・マネジャーが業種・業務知識を備えていれば顧客との折衝がうまくいきやすい。プロジェクトにかかわるすべてのエンジニアが業種・業務知識を備えていれば,プロジェクト全体の効率が上がるのだ。

 もちろん業種・業務知識にもいろいろあるが,まず知らなければならない「基本」は,「業界用語」だ。業界独自の言い回しを知らないと,そもそもユーザーと会話が成り立たない。このため,プロジェクトの最初に「業界用語集」を作ることを決めているITベンダーも多い。

 堅苦しいことを抜きにしても,「業界用語」は単純に面白い。

 例えば,冒頭で挙げた○は,証券業界の関係者にとっては「無しになった」,「ダメになった」という意味を持つ。証券取引所の立会い会場で,証券会社の社員同士が情報をやり取りする手段は手のサインだった。受話器を持ちながら情報交換するケースも多いので,サインには片手しか使えない。こうしたサインの中で,親指と人差し指で作る「マル」は,数字のゼロの意味。ここから○が「無し」や「ダメ」という意味になったと言われている(他にも説はあるようだが)。

 また,スーパー業界の「エンド」は,商品の陳列棚(ゴンドラ)の両端部分のことである。エンドでの陳列は顧客の注目度が高いので,スーパーにとって非常に重要なのだ。

 最近は,インターネットで,こうした業界用語が簡単に検索できるようになった。ネットで様々な業界の用語の意味を調べてみるのも面白いだろう。きっと,いつか役に立つはずだ。

 ちなみに,冒頭で挙げた業界用語の意味は,ITpro SkillUPサイトの中の「必修講座100」というページにある講座「金融業界の業務とシステムを知る」と「流通業界の業務とシステムを学ぶ」の中の「知っておきたい業界用語」という囲み記事に意味が書いてある。興味のある方はぜひご覧いただきたい。