![]() オムロンのCIOである樋口英雄・執行役員業務改革本部長 |
オムロンは2002年3月期の赤字転落から「V字回復」を果たし、業績拡大を続けている。並行して、事業部門ごとの独立性が高い企業文化を打破し、事業部門横断で改革を進めるために、「業務改革本部」を設置。IT(情報技術)企画部門や調達部門などを配下に収める。
樋口英雄・執行役員業務改革本部長は、オムロンの実質的なCIOとして改革の旗振り役を務める。樋口氏の前職は事業部門トップだが、作田久男社長から、「ITによる改革を担ってほしい。部門横断の仕事をできるのはお前しかいない」と頼まれ、2004年から現職に就いた。
樋口氏は「ストレッチ(背伸び)」という言葉をよく口にする。IT活用を含む抜本的な業務改革をしなければ達成できないような、大きな目標を立てるべきだという考え方だ。「すぐに達成できる目標では意味がない。目標達成のための改革を実行するのは、業務改革本部ではなく、あくまで事業部門。事業部門と業務改革本部が手を携えて、『共同目標』を立てなければならない」
具体的には、FA(ファクトリー・オートメーション)機器の事業部門で、「顧客への24時間デリバリー」という目標を掲げた。10万以上の品種を扱い、日本や中国で多品種少量生産した製品を日米欧の世界中に散らばる顧客に届けるというのは、容易な目標ではない。
樋口氏は、業務プロセスを徹底して見直した。海外法人が個別に在庫を持つ方法では、どうしても各地の在庫に過不足が出て納期遅れにつながるため、この方法を廃止。工場側で全世界の在庫を一元管理できる情報システムを構築し、補充すべき量を必要なときに生産する方式に改めた。
こうした改革では、仕事のやり方が変わってしまう海外法人からの抵抗に遭うことも多い。そこで重要なのが「ストレッチ」だというわけだ。「目標が厳しいから、自然と、事業部門側も『ITを使って何とかしなければ』という気持ちになる」
樋口氏は若手時代に情報システム構築に携わった経験があり、システムの素人ではない。しかし、改革に向けた情報戦略を立案するに当たっては、「勝ち組企業のIT活用法をベンチマーキングの対象にしようと考え、徹底的に研究した」と話す。これまでに50~60社は訪問したという。「(学会やセミナーで得る情報より)リアルな実践情報が大切」と話す、行動派のCIOである。
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