◆今回の注目NEWS◆

◎個人情報、緊急時の利用例を明確に・保護法の運用改善(3月20日、NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070320AT3S1901919032007.html

【ニュースの概要】個人情報の第三者への提供を制限する「個人情報保護法」について、各省庁は緊急時に適用しない例外をガイドラインとして明示する。20日の日本経済新聞によると、政府はこのルールを守れば情報を出した企業などは免責されるとの考えを示したという。


◆このNEWSのツボ◆

 個人情報保護法については、法施行後間もない頃から、これを盾にして、過剰な情報秘匿が行われているという点が指摘されていた。今回、各省庁が、「情報保護が適用されない緊急のケース」を明示するガイドラインを提示する…というのは、こうした状況を考慮したものであろう。

 こうした各省庁の姿勢は、法解釈が曖昧になりがちなケースで一定の幅を示すという点で評価できる。ただ、少しだけ懸念されるのは、ガイドラインが“逆解釈”され、情報の利用が必要な場合も「ガイドラインに書いていないから、情報は出す必要がない」といった主張がされる可能性があることである。

 これは、かつてプロバイダ責任制限法が施行されたときに、法律自体は、本来、「こういった場合は、プロバイダの責任は減免される」という趣旨であったはずが、「ここに書いてないことはすべて、プロバイダの責任」的な解釈や主張が出てきたのと同様である。

 もう一つ、個人情報保護法を盾に情報公開を拒むといったケースの中には、本来の法律の趣旨とは関係ないケースが結構含まれていた。例えば、事件や事故のあった学校で、関係する教師に関する情報を一切学校が出さない…といったケースである。しかし、個人情報保護法は、あくまで大量の個人情報データを保有する事業者に対して、一定の規制をかけるものであって、プライバシー保護の規範を示したものではない。どういった場合に、個人のプライバシーが守られ、どういった場合には、それを公表、あるいは利用して良いか…といった問題は個人情報保護法とは別の枠組みの下で議論されるべき問題である。

 このガイドラインは、あくまで個人情報保護法に関するものであって、プライバシー全般に関するものではないという点には、十分な注意がされる必要があろう。また、こうしたガイドラインのほかに、情報を出すべきか、出すべきでないかについて、各省庁が、疑問・問い合わせに答える「個人情報照会窓口」のようなものを設置し、その利用を促進することも有効な補完手段となるのではないだろうか。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。