忘れもしない,2004年12月16日。平成16年度秋期情報処理技術者試験の合格発表日。
当時大学3年生の私は,画面の前で「やっぱりな・・・」と,ひとり溜息をついていた。そこに表示されていたのは,とても残念なお知らせである。
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平成16年度 秋期 情報処理技術者試験 成績照会
テクニカルエンジニア(ネットワーク)
受験番号 NW321-XXXX の方は,不合格です。
午前試験のスコアは,670点です。
午後1試験のスコアは,645点です。
午後2試験のスコアは,585点です。
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試験との出会い
私が情報処理技術者試験と出会ったのは,1998年・・・高校1年の初夏のこと。部活動にコンピュータ部を選択した私は,先輩から「初級システムアドミニストレータ試験」や「第二種情報処理技術者試験(今の基本情報技術者試験)」の存在を教えられた。
小学5年生からパソコンを触り始め,多少は腕に覚えのあった私。「自分の実力を形にして証明できる」という言葉にそそのかされ,「じゃあ証明してやろうじゃないか」と,4カ月間,暇をみつけては初級システムアドミニストレータ試験の参考書を眺め,意気揚々と受験するも,結果はアッサリ不合格。翌年,2回目の受験で,ようやくリベンジできた。
次は2002年秋。大学1年生の時に受けた「情報セキュリティアドミニストレータ試験」。
それなりに勉強時間は費やしたはずなのに,これまた1回目は不合格。やはり翌年にリベンジした。
2004年春に受けた基本情報技術者試験は一発合格するも,実は前年の試験を体調不良で欠席してしまったため,2回目の申し込みであった。こうして,自分の中で,「情報処理技術者試験は2回目で合格する」という,“嫌なジンクス”がすっかり定着してしまったのだ。
過去の経験を徹底分析
2004年初夏。大学3年生の私は,翌年から始まる就職活動を意識し始めていた。プログラマやSEよりも,ネットワークエンジニアの志向を持っていた私は,少しでも採用担当者の目を引くべく,テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験の取得に向けて動き出した。
大学の講義+情報セキュリティアドミニストレータ試験対策で勉強したことをベースに,4カ月間勉強するも,結果は冒頭の「やっぱりな・・・」であった。
これは本気で対策しないと駄目だ・・・何としても「情報処理技術者試験は2回目で合格する」というジンクスから脱却せねば!と思った私は,過去の経験を徹底的に分析した。
◆「頭を使った」問題演習をしていなかった
要するに,漠然と過去問や市販問題集といった「量」を解き進めるばかりで,そこから学ぶことの「質」が低かった。自分の弱点分野をはっきりと把握しようとせず,ただ闇雲だった。また,言いたい事を適切な字数の文章に直す訓練が足りていなかった。このため,正解に近いインスピレーションは湧いていても,書き起こすのに手間取り,結果として時間が足りなくなったり,稚拙な表現に甘んじてしまう傾向があった。
恐らく,受験当日に「落ちたら次のチャンスは1年後・・・こんな面倒なこと二度も三度もやってられるか!」と,ナマケモノゆえに出てくる驚異の集中力を発揮して問題に取りかかることにより,短時間で密度の濃い問題演習をやっていたのではないかと思う。
そして試験時間中,知らず知らずのうちに自分の弱点を把握した私は,次の試験までの間に,知らず知らずのうちに弱点を補う勉強を行い,知らず知らずのうちに実力を溜め,2回目には「何となく」合格していたに違いない。そういう意味では,試験当日が最大の勉強チャンスだったのかもしれない。
◆「目線」が確立していなかった
試験区分ごとに期待される役割や立場,知識レベルが設定されているが,問題を解くに当たって,自分がその立場に立って考えるロールプレイングができていなかった。
当時,学生で実務経験のなかった私にとって,午後問題はとても敷居の高いものであった。それと同時に,解いていて一番面白いのも午後問題だった。実務をイメージした事例解析や問題解決を問われ,自分がこの状況に置かれたらどう対応するだろうか?と妄想にふけっていると,ワクワクしてしまったのだ。
試験テクニックと言われるコツもなくはないが,事例解析問題を解く時の基本精神は「ロールプレイング」に尽きる。これが,過去の経験から分かったことだ。
ある事象に対する解釈やふるまいは,立場が違えば全く異なる。釣りバカ日誌に登場するハマちゃん。直属の上司から見ればとんでもないグータラ社員に映るだろう。同僚から見れば気のいいオジサンだろう。経営者の視点で組織のトータルバランスを考えた場合は,むしろ必要な人材と解釈されるかもしれない。
つまり,自分に欠けていたのは,「テクニカルエンジニア(ネットワーク)としての確固たる目線」だったのである。目線が確立していないから,“役になり切れない”。徹底したロールプレイイングができない。ゆえに,入って来た情報に対する解釈やアウトプットにブレが出てしまっていた。
ジンクスからの脱却
以上が,私が不合格を通じて学んできたことである。
自己分析が功を奏したか,“2回目合格の法則”に守られたかは分からないが,2005年の秋期試験では午前試験のスコア695点,午後1試験のスコア680点,午後2試験のスコア655点で,見事にリベンジを果たすことができた。また,2006年春に受けたテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験,2006年秋に受けた上級システムアドミニストレータ試験については,幸運にも一発合格することができ,嫌なジンクスからも脱却できた。
両親曰く,私は不器用で単純な子供だったらしい。幼児時代にレゴブロックを買い与えられても,ひたすら長く横につなげるか,ひたすら高く積んでいくかのどちらかでしか遊ばなかったそうだ。「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので,今も根底では変わっていない気がする。
「情報処理の資格,何持っているの?」と聞かれて,ああだこうだと列挙するのが面倒に感じてきた私。それだったら,「全部」って言える立場になっちゃえばいいんじゃないか?情報処理技術者試験の完全制覇まで,この先何年かかるか分からないし,これからも試験に落ちることは度々あるだろうが,「試験当日に最大のヒントがある」,「不合格こそ自分を見つめ直すチャンス」と自分に言い聞かせて,これからも突き進んでいく次第である。
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