10年がかりのプロジェクトを指揮した牛尾榮治・常務取締役 情報システム部長 |
国際航空貨物大手の近鉄エクスプレスは、10年がかりの大規模プロジェクトを昨年完了させた。1997年にスタートした「GSP(グローバル・システムズ・プラン)プロジェクト」は昨年5月に新基幹システムの稼働という形で結実した。
このプロジェクトの指揮を執ったのが、CIO(最高情報責任者)的な役割を担う牛尾榮治常務だ。8年前から情報システム部長を務めてきた。新しいシステムの下で、世界15カ国に貨物追跡データや倉庫で預かっている品物の入出庫データを提供できるようになった。「取り扱い物量の94%はカバーできた。一区切りがついた」と牛尾常務も胸を下ろす。最終的には、全世界170以上の都市で同じシステムを運用するつもりだ。
ビッグプロジェクトは競合他社を意識したものではなかった。「競合他社をベンチマークにはしない。あくまで顧客の将来的なニーズを汲み取って我が社独自の視点で考える」(牛尾常務)。顧客企業が実現したいSCM(サプライチェーン・マネジメント)はそれぞれ異なる。顧客が求めるニーズを実現しながら「サード・パーティー・ロジスティックス(3PL)」の分野を開拓していく。
「当社はIT企業ではない。従来は発注とテストだけを管理しているだけでベンダーに依存するところが大きかった。現在は、グローバルなアプリケーションやネットワーク、サーバーの管理、セキュリティー、ウイルス対策など業務分野が増えている。社内の技術的なレベルも高めていかなればならない」と牛尾常務は話す。米国のシステム子会社を使うなど開発の体制もグローバルだ。「ITガバナンスの大切さを感じる。物流サービスと同様、システムでも『見える化』が大切」と指摘する。
「ユーザー部門からは『スーパーユーザー』と呼ばれるユーザー部門の代表者にシステム構築についての意見を言ってもらっている」(牛尾常務)。ユーザーの声は新たな改善テーマを生むことになる。巨大プロジェクトを成し遂げたCIOだが、一息つく暇もなさそうだ。
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