ORACLE MASTERとは,Oracle社が行っている認定資格制度で,次の「認定パス」が提供されています。認定パスとは,Oracleの技術,ツール,ソリューションを設計,管理,開発する方々が,職務で必要とする判断能力を備えることを目標に,職務別にゴール(認定資格)を定めたものです。

・Oracle Database 10g
・Oracle9i Database
・Oracle Application Server 10g
・Oracle9i Application Server
・Oracle PL/SQL and Oracle Forms Developer
・Oracle Developer R6i Forms
・オラクル認定コンサルタント ( Oracle Applications )

 このうち,「Oracle Database 10g」認定パスの「ORACLE MASTER Bronze」,「ORACLE MASTER Silver」,「ORACLE MASTER Gold」は,データベース管理者として必要となる管理業務を行うための知識を認定する資格です(Goldの上位資格にPlatinumがありますが,実技試験なので,本連載では取り扱いません)。

 また,「Oracle Application Server 10g」認定パスの「ORACLE MASTER Silver」は,企業レベルのアプリケーション,ポータル,Webサイトなどを統合,開発,展開するために必要な知識を認定する資格です。

 「Oracle Database 10g」認定パスと「Oracle Application Server 10g」認定パスの資格と試験の概要は表1の通りです。

表1●「Oracle Application Server 10g」認定パスと「Oracle Database 10g」認定パスの資格と試験の概要(Platinumは実技試験なので掲載していない)
[画像のクリックで拡大表示]

 また,既に9i以前のバージョンでORACLE MASTER を取得している方が,「Oracle Database 10g」認定パスに移行する場合は,図1のような移行試験を受験することになります。

図1●9i以前のバージョンのORACLE MASTER取得者が「Oracle Database 10g」認定パスへ移行するための方法
資格の種類に応じた移行試験を受験する。
[画像のクリックで拡大表示]

 これから,オラクルを勉強し,認定資格を取りたいという方には,「Oracle Database 10g」認定パスをお勧めします。

 図2をご覧ください。「Oracle Database 10g」認定パスの資格は,データベース管理者の一通りの業務について知識を持っているかどうかが,問われます。修得の深さに沿って,Bronze,Silver,Goldに分かれており,さらに上を目指す方は,実技試験を受けてPlatinumの認定を受けることもできます(図1参照)。

図2●Bronze,Silver,Goldの試験範囲

 「Oracle Database 10g」認定パスの資格を持っていると,実務面では,「経験や知識によりその技術力の深さは違うかもしれないけれど,データベース管理者として必要最低限のことはできるだろう」と判断されます。

 今時ネットワークからアクセスできないデータベースはないでしょうから,開発者にとっても,「データベースを構築して終わり」ということはなく,エンドユーザーのPC(クライアント)から接続できる設定/確認までは当然の仕事と思われているでしょう。このため,データベース開発者にとっても,「Oracle Database 10g」認定パスの資格は有用です。

 データベースのリカバリの経験は,障害に遭遇した経験の有無と一致します。しかし,仮に未経験だったとしても,「Oracle Database 10g」認定パスの資格を取得していれば,「それだけ,今まで強靭なシステムを構築/運用してきたのだろうな」と良い印象を持ってもらえるかもしれません。資格も持たずに,「何をどういう方法でバックアップすればいいか知りません」なんて言ったら,顧客の信頼を失ってしまうでしょう。

資格によって知識の深さが違う

 では,Bronze,Silver,Goldの順に,試験範囲の概要を見ていきましょう。

 改めて図2をご覧ください。図を見れば分かるとおり,BronzeとSilverの試験範囲は同じです。しかし,求められている知識の深さが違ってきます。

 バックアップ/リカバリの範囲を例にとって説明すると,Bronzeでは,フラッシュリカバリ領域(注1)の構成を修得します。どこに何をバックアップするかを設定しておけば,万が一障害が発生しても,運用管理ツール「Enterprise Manager」のリカバリウィザードを使用して回復できます。

 一方,Silverでは,まず障害の種類とそれぞれに対する対処法を理解したうえで,自分でバックアップ計画を立て,障害時の対処法も制御ファイルの損失,NOARCHIVELOGモード(注2)でのデータファイルの損失およびARCHIVELOGモードでのデータファイルの損失からの回復方法を修得します。

 さらにGoldでは,BronzeとSilverよりも深い,バックアップ/リカバリとパフォーマンス・チューニングの知識を修得します。バックアップ/リカバリを例にとると,色々なタイプのデータファイル(表領域)の損失やREDOログファイルの損失からの不完全回復,完全回復,フラッシュバック機能を使った回復を修得します。いかがですか?バックアップ/リカバリと一言で言っても,奥深いことがお分かりいただけるでしょう。

 なお,ORACLE MASTER は“積み上げ方式”なので,Goldを目指している人は「1Z0-043J(Gold DBA10g)」だけを受験すればよいわけではありません。Bronze,Silverの各試験に合格しておく必要があります(図1参照)。

 受験の順序は,どの試験から受験してもかまいません。認定申請(注3)を行うまでに,必要なすべての試験に合格していればいいのです。とは言え,いきなり難しい試験から挑戦する人はいないので,通常は「1Z0-017J(Bronze SQL基礎I)」→「1Z0-041J(Bronze DBA10g)」→「1Z0-042J(Silver DBA10g)」→「1Z0-043J(Gold DBA10g)」という順で試験を受けます。

 次回以降,ORACLE MASTERの“登竜門”といえる,Bronze SQL基礎I(1Z0-017J!))を解説したのち,Bronze DBA10g(1Z0-041J)について,一緒に学習することにします。


林 優子
システム・テクノロジー・アイ 取締役副社長。日本オラクルの教育ビジネスのスタートアップを全面的に支援し,Oracle歴十数年のベテラン講師として知る人も多い。著作は「オラクルマスター教科書」(翔泳社)など多数。2005年,日本オラクルよりBest Instructor of the Year賞を受賞。また2006年には,日本オラクルが主催するOracle Award 2006において,オラクル研修ビジネスに最も貢献したパートナーに贈られるOracle University Partner of the yearをシステム・テクノロジー・アイが受賞した。
■変更履歴
「Silver DBA10g(1Z0-042J),Gold DBA 10g(1Z0-043J)について,一緒に学習することにします」としていましたが、都合により、Silver DBAとGold DBAの連載は休止します。本文は修正済みです。 [2010/02]