三浦 雅孝 アイ・ピー・ビジョン
CTO
三浦 雅孝

SIPはWebをはじめとするIPサービスと相性がよいプロトコルといわれている。キャラクタ・ベースでHTTPなどと似ており、簡単な構造である。このため、Webアプリケーションなどとの連携がしやすい。とはいえ、具体的なアプリケーションやサービスの本格化はこれからである。その辺の可能性を探る。

 SIPが電話の通信プロトコルとして急速に普及した理由は、おもに(1)キャラクタによるコーデングでわかりやすい、(2)HTTPなどのインターネット・プロトコルとフォーマットが共通--などであるため、Webといったインターネット・サービスと連携しやすいからである。また、プレゼンスやインスタント・メッセージといった機能を備えていることもSIPの魅力である。

 従来、電話網やPBXを外部のソフトウエアから制御するのは、大変な仕事であった。CTI(Computer Telephony Integration)アプリケーションの開発は、事実上、PBXメーカー自身もしくは一部の専門知識を持ったインテグレータやソフトハウスだけしかできなかった。筆者はPBX連携のソフトウエアの開発に従事したことがあるが、PBXメーカーから出された膨大な仕様書と格闘した記憶がある。そのインタフェースはPBXベンダー各社で異なっており、複数のPBXと連携できる汎用的なソフトウエアを構築するのは“至難の業”であった。それがSIPによって大きく変わる。Webアプリケーションに容易に電話などのSIP機能を組み込める。

 しかし、SIPのメリットを生かしたサービスやアプリケーションはまだ少ないのが実情である。転送など、従来の電話でも提供されていたサービスがほとんどで、WebとIPネットワークの統合によって生み出す新たなサービスはこれからである。

 今後の可能性を秘めるSIPとWebとの統合例をいくつか紹介する。

Click to Dial(クリック ツー ダイアル)の実装

 「Click to Dial」とは、Webページ上などに表示されたアイコンやリンクをクリックすることで、相手に自動的に電話をするサービスである。Click to Callとも呼ぶ。eBayは、Skypeを利用して、このサービスを不動産物件の売買に利用している。物件に関して販売元に簡単に問い合わせができる。報道によれば、成約率が25%もアップしたという。

 このサービスを実現するには大きく3種類の方法がある。
A:ブラウザから同じPCにインストールされているソフトフォンを起動する
B:SIP電話機、またはSIP-PSTNゲートウエイを経由して接続された電話機を利用する。(REFERコマンドを使用)
C:ActiveXなどで作成されたソフトフォンを提供、起動する