ウェブサイトと技術

 ウェブサイトは一昔前、ネットワーク技術の発展の中でその存在を表した。

 テキストの伝送が主だったかつてのネットワークは、画像や音さらには各種ファイルをマウスでビジュアルにコントロールしながらコミュニケーションできるアプリケーションソフト(ブラウザ)の登場により飛躍的、いや革命的に変化した。

 ブラウザが登場するまでのインターネットコミュニケーションは、基礎的なネットワーク技術を理解している専門家が、目的に応じて適切なコマンドを入力しながら、ファイルの送受信やダウンロードを繰り返し、さらにそれぞれのファイルを展開動作させるソフトを起動させて通信していた。従ってそれまでインターネット通信が行える環境であったのは、かなり限られた社会であり、当然、普及率も数パーセントというものであった。

 前述したように、現在では、コマンドレベルは理解しなくても、簡単にネットサーフィンができる時代になっているため、使う側(ユーザーレベル)ではこのあたりの事はさしてどうのということでもない状況となっている。

 しかし、これが企業や情報発信をビジネスとするサイト側になると多少状況が異なってくる。確かに、既存、既製のシステムを利用してのコミュニケーションはそのシステムが保証する仕様範囲内のことであれば実現するし、継続的に運用は可能である。

 ビジネスによっては常に変化や新規性を求められるものもあるであろうし、企業の情報サイトでもそのコミュニケーション手段や手法は当然時代とともに、あるいは時代の先端を走るがごとく、考慮され続けていくべきものと思う。このような中で、新しい技術やトレンドをどう取り込んでいけばいいのだろうか?

技術の求め方

 いろんなフォーメーションが想定されるが、難しい課題でもある。大きく、社内リソースでの配置と社外への委託とが考えられる。また、その業務内容によっても大きく左右される。

 たとえば、システムの運用業務、各種アプリケーションソフトの開発、アプリケーショントレンドの検討、それらを組み合わせた総合的なプランニング‥、などなど、その他いろんな技術的な業務領域があるため、一概には正解が出せない。

 理想的には、社内に優秀な技術リソースの円滑なローテーションがあり、豊富に配置できるのであれば、社内に越した事はないだろう。技術的なノウハウの蓄積もでき、強固な体制となるであろう。

 しかし、現実的には、コストや新鮮な技術ノウハウの観点からいうと、必要とされる領域に関しては、社内外の組み合わせという線に落ち着く場合が多いようである。また、当然、数多くの新しい技術は、世界中で毎日のように生まれているのも現実である。

本来の目的

 さて、そもそもは、ウェブサイトにはそれぞれの目的があるわけで、それを実現させるために技術が存在する。したがって、究極はサイト側に技術者がいなくても、明確なビジョンとボイスを持っていれば、その目的は達成する事は可能である。

 ここで願わくば、サイト側に求められるのは、技術トレンドを理解して、自分たちの目的を十分理解しそれを形にするための合理的な方法やプロセスをプランできる人間が社内にいるべきだろう。この方はコテコテの技術者でないほうがよい場合が多い。

 その方の教育や経験の中に技術を理解し、ディレクションできるセンスが必要である。

 ネットワークやコンピュータ等を使用しているため少なくともそうあるべきだろう。宣伝広告担当者が印刷の原理や撮影のノウハウを全く知らないのと、知っている、更にはデザインや美的センスが有るのと無いのとでは、その品質に大きな違いが出るのと同じだ。

 もちろん、表現領域では、このような宣伝広告的知識や出版編集的知識も求められる。これらを一人でやるのか、組織として機能別に分担して業務するのかなど、会社の規模やビジネスの規模により多種のフォーメーションが考えられる。今回は技術という視点にスポットを当てているため、企画やコンテンツレベルでの話は次回以降にするとしよう。

 このように、情報発信側で、どれだけ技術的理解のバックボーンがあるかないかでそのコミュニケーション手法や手段においてかなりの品質の差になって現れるということを認識しておいた方がいい。

 つまりは、顧客との接点であるウェブを通して、顧客が感じる満足感や充足感、安心感はこれらの見えない領域の力が継続的、累積的に効いてきた積分値となっていることに気が付くだろう。