今回は給与管理アプリケーションを取り上げる。

 給与管理アプリケーションは,給与規定に基づく煩雑な給与計算や賞与計算,年末調整,出退勤管理,社会保険など数多くの項目を管理する。財務管理や人事管理など,他のシステムとのリアルタイムかつシームレスな連動も欠かせない。最近ではパート・派遣・契約社員など,いわゆる非正規社員の雇用が活発化する中で,複数の給与規定や人事制度に基づく効率的な管理を実現できるパッケージが求められている。

 さて,これまで紹介してきた財務会計・販売・人事管理といったアプリケーションと同じように,給与管理においてもOBCの「給与管理」の市場シェアが一歩抜きん出ている。給与管理は,他のシステムと比較して,汎用性が高い業務であり,ユーザーごとにカスタマイズによる差別化が求められる割合は低い。だが,パッケージ製品のシェアを見ると,結構大きな差が生じている。

 以下で,詳細を追っていきたい。

現時点では「給与奉行」強し

 給与管理はパッケージが69.6%,自社製オーダーシステムが30.4%%で,回答企業の約7割がパッケージを活用している。パッケージ製品のシェアは,トップがOBCの「給与奉行」で26.0%,2位が弥生の「弥生給与」及びPCAの「PCA給与」の11.8%だった。

図1●給与管理パッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)
図1●給与管理パッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)

 回答企業の年商規模別に見ると,50億円未満のシェアトップは「給与奉行」で28.6%。2位が「弥生給与」で14.0%,3位が「PCA給与」で12.7%だった。また,年商規模50億円以上では,シェアトップは「給与奉行」で16.7%,2位がアマノの「Time Pro-getシリーズ」で8.3%,3位が「PCA給与」で6.3%となっている。特に,年商50億円未満の企業での「給与奉行」の強さが目立つ。50億円以上になると,やや混戦気味となる。

図2●給与管理パッケージのシェア(年商50億円未満,Nは有効回答数)
図2●給与管理パッケージのシェア(年商50億円未満,Nは有効回答数)

図3●給与管理パッケージのシェア(年商50億円以上,Nは有効回答数)
図3●給与管理パッケージのシェア(年商50億円以上,Nは有効回答数)

 その一方でパッケージ製品への評価を見ると,シェアとは異なる結果が出ている。

「弥生給与」に高評価,「給与奉行」は一歩及ばず

 給与管理パッケージのシェア上位5社の中で,最も高い評価を得ているのが「弥生給与」の76.3である。これに大塚商会「SMILEα給与管理」の75.4,「PCA給与」の74.4,アマノ「Time Pro-getシリーズ」の73.2,「給与奉行」の72.9が続く。

図4●給与管理パッケージのシェア上位製品の評価(Nは有効回答数)
図4●給与管理パッケージのシェア上位製品の評価(Nは有効回答数)

 この評価結果を見ると,圧倒的な市場シェアとは違って,「給与奉行」の評価はシェア上位5社の中で最下位であり,逆にシェア2番手の「弥生給与」,シェア4番手の「SMILEα給与管理」が高評価を獲得している。「弥生給与」や「SMILEα給与管理」が,トップのOBCにとって将来のシェアを脅かす可能性を秘めた製品であることは間違いないところだ。

評価高かった「SMILEα給与管理」はシェア伸長の兆しあり

 今後の導入予定では,回答企業の91.9%がパッケージ製品を利用する予定だ。パッケージ製品の導入予定シェアのトップは,現在と同じ「給与奉行」で26.5%,2位が「SMILEα給与管理」で15.0%,3位が「弥生給与」で14.2%である。評価の最も高かった「弥生給与」でシェアの伸びが認められるが,それ以上に評価2番手の「SMILEα給与管理」が今後シェアを大きく伸ばす可能性があることを示唆している。

図5●給与管理パッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)
図5●給与管理パッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)

 次回は,生産管理アプリケーションを取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て98年に独立し,ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。