ウルシステムズ
主席コンサルタント
中村 正弘

Web2.0は「普通の企業」にも大きな価値をもたらす。連載第2回目は,「永久にベータ版」をシステム構築の観点からとらえ,それが企業に与える意味と効果について解説する。(ITpro)



 前回(第1回目)の記事では,Web2.0が「普通の企業」にどんな価値をもたらすかをご紹介した。現在Web2.0が注目されている理由,今後企業システムにも普及していくことがお分かりいただけたと思う。

 これから3回にわたって,Web2.0の具体的な活用方法に踏み込んでいく。まず第一弾の今回は,システム開発プロジェクトにどうWeb2.0を生かすか解説する。図1をご覧頂きたい(前回の記事でも示している)。「永久にベータ版」をシステム構築の観点からとらえ,それが企業に与える意味と効果について述べよう。

図1
図1●今後の進展が期待されるWeb2.0の活用エリア

短期開発は情報共有が命

 まず,「永久にベータ版」についておさらいしておこう。様々な定義があるが,おおよそ,この2点に集約される。

(1)ソフトウエアをパッケージとしてユーザーのコンピュータに配布するのではなく,Web上に存在するサービスとして提供する。ユーザーのコンピュータに配布しないので,再配布のコストを気にせずに機能をアップグレードできる。このため,ユーザーは常に最新版の機能を使用できる。

(2)ユーザーから寄せられた意見や課題に,素早く対応できる。不評な機能であれば改善し,使われない機能は削除する。結果として,システムのアップデートは頻繁に発生する。

 この「永久にベータ版」を実現する上で,開発者は次のような意識改革が必要になる。

(a)なるべく短期間に,かつ頻繁にシステムをアップデートし続ける体制を整えるべき。開発生産性を向上するために,「軽量プログラミング・モデル」――例えば,Rubyのようなスクリプト言語――を採用する。

(b)軽量プログラミング・モデルと相性の良い,より軽量な開発手法を採用する。

 (a)については各所で頻繁に取り上げられているが,(b)についてはまだそれほど話題にはなっていない。

 より軽量な開発手法とは,どのようなものか。ここでは「Web2.0スタイルの開発手法」と称して,その全体像を見ていこう。