◆今回の注目NEWS◆

◎政策評価の点検結果(総務省、3月9日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/pdf/070309_2.pdf

【ニュースの概要】総務省は、各府省が実施した政策評価について点検し、その結果を公表した。7府省23事例2事項について、2006年度にやり直しなどを指摘した。


◆このNEWSのツボ◆

 総務省から、政策評価の点検結果の概要が公表された。

 おそらく、メディア的には「こんなに無駄遣いが!!」ということで、突っ込みどころが満載であろう。そういう意味では、非常に興味深い資料であるが、他方、なんとなく違和感も感じる。

 ここで指摘されている問題点の多くは、たとえば「人口推計の前提が間違えているのではないか?」「事業評価の前提となるアンケート調査の正確性に問題があるのではないか?」「交通量の推計が間違えていないか?」など、それぞれは、もっともなものである。

 しかし、こうした観点で政策評価の点検を始めた場合、実は、ほとんどの政策や政策評価で修正が求められるのではないか?この報告を読んだ時に多くの人が感じるのは、その「違和感」ではないか?レポートによれば、評価のやり直しが求められた事例は7府省23事例2事項だとのことである。それでは、「評価が妥当」とみなされた事例はいくつあったのだろうか?

 今回のレポートは、ミクロの「政策評価」の報告書としては、非常に興味深い。しかし、正直に言って、非常に小さなフィールドで「成果を誇っている」ようにも読めるし、「政策評価」の点検というより、事務の執行状況をチェックする従来の行政監察の衣替えのような気もしないではない。

 例えば人口推計の正確性を問題にするのであれば、年金財政の基本になっている人口推計などの方が、はるかに政策的には重要な意味を持つはずである。しかし、年金財政の前提となっている人口推計は発表のたびに下方修正が繰り返されている……。

《参考》新人口推計を契機に建設的な年金論議を(RIETI研究員 中田大悟、2006年11月28日)
http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0204.html

 今の日本に必用な政策評価の点検は、もう少しマクロな視点のものではないか……と思うのは私だけだろうか?

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。