2月19日に開催したセミナーの会場風景
2月19日に開催したセミナーの会場風景
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 日経ニューメディアは2007年2月19日に,「通信・放送改革の旗手が描く新メディア戦略」と題したセミナーを開催した(写真)。通信と放送の連携が加速することで,日本の通信・放送市場はどこに向かうのかを,キーパーソンに解説してもらった。本稿では慶応義塾大学の講演を基に,通信・放送連携の最新動向や今後の見通しなどを紹介する。

 本格的な通信と放送の統合時代を迎えて総務省は,政策の舵(かじ)を大きく切った。通信と放送を区別してそれぞれのインフラを整備することから,両者の区別をなくして統合を加速させる政策を打ち出そうとしている。慶応義塾大学の中村伊知哉教授は,こうした通信・放送政策の大転換期の現状と将来について,「メディア融合2.0」というテーマで解説した。

 2011年の地上アナログ放送の終了によって放送が完全にデジタル化されると,インフラ整備を中心にしたこれまでの政府の役割は終わる。「これから政府に求められるのは,コンテンツビジネスの育成に主眼を置いた政策になる」と,中村教授は言う。

通信・放送政策,10年に1度の大転換へ

 コンテンツ市場を成長させるためには,放送コンテンツを通信ネットワークで流し,通信コンテンツを放送ネットワークで流す「通信と放送の統合」を加速させる必要がある。そのためには現行の法制度も統合時代にふさわしい体系に見直す必要があるというのが,中村教授の主張である。

 実は,中村教授が総務省で通信・放送政策にかかわっていた1993年に,通信と放送の統合議論が省内で起こったことがある。当時の大臣は小泉純一郎氏だった。タブーとされていた統合の議論を行うことは解禁できたが,「統合は認めない」という総務省の姿勢を変えることはできなかった。それから10年以上が経過した2006年には,「竹中懇談会」の最終報告書とそれを受けた政府・与党合意によって,状況は様変わりした。「一つの政策を変えるのに,少なくとも10年はかかる」(中村教授)典型例といえる。

 通信と放送の法体系の見直しとNHK改革については,既に具体的な作業が進んでいる。中村教授によると,(1)著作権法上でIP放送をケーブルテレビ(CATV)と同じ扱いにすること,(2)地上波放送事業者に割り当てている周波数の有効活用(帯域免許制の導入や電気通信役務利用放送法の適用),(3)地上アナログ放送終了後の周波数の有効活用──の実現などが,今年から来年にかけての重要な課題になるという。