さて、今回はヤマト運輸のWebサイトを、SEOとLPOの視点からチェックしてみたい。SEOとLPOについて、ごく簡単に復習しておこう。SEOは、Search Engine Optimizationの略で、「検索エンジン最適化」と訳される。その目的は、検索エンジンから、 Webサイトへの集客力強化を図ることだ。一方のLPOは、 Landing Page Optimizationの略で、 「入り口ページ最適化」と訳され、その目的は、前述のSEOによって集客した利用者に、サイト内をしっかり見てもらうよう、誘導することだ。

SEOの視点、第一は「h要素」

 まずは、見出しを定義する要素、「h要素」(実際には、「h1」~「h6」まである。)について見よう。見出しが定義されているかのチェックだ。総合トップページに「h要素」を設定すべきかどうかというのは、Web制作業界内でも、実は意見が分かれるところだ。総合トップページでは、「見出し」、「本文」といった区分が、明確にならない場合が多いからだ。今回は、検索エンジンのクローラー(情報を集めて回るプログラム)の側から見て有効かどうか、という視点で考えたい。

 検索エンジンのクローラーが、それぞれのWebページを訪問して回る目的は、それぞれのページが「何について書かれたページであるか」を把握することだ。これによって、検索エンジンの利用者が特定の検索ワードで検索した際に、「このページが、お探しのページではないですか?」と、オススメ度の高い順番に並べて紹介することが可能になる。

 このため、Webサイトの運営者が検索対象になって欲しいと望むすべてのWebページは、クローラーを迎え入れる準備が必要である。むろん、総合トップページも例外ではない。クローラーを迎え入れる準備として、正しい文章構造を持っておかなくてはならない。クローラーはプログラムだから、HTMLやXHTMLのルールに則って構造化されたページの方が、データを取得しやすい。文章構造化の基本は、見出しと本文の分離にある。SEOにおいて、見出しを定義する「h要素」が重要だといわれる理由である。

 ヤマト運輸のページは「h要素」が無い。ここに大きな改善の余地がある。クローラーに、「この部分が見出しです」ということを認識してもらうためには、<h1>等のタグの使用が不可欠である。

 「h1」~「h3」要素を、どのように使用すべきかは、図1を参照してもらいたい。見出しに画像を使用したい場合でも、<h1>等のタグで挟んで<ALT>属性を記述すれば、見出しとして定義できる。なお、左上のサイトロゴに「h1」要素を使用するのは、通常、総合トップページのみである。例えば、サービス一覧のページであれば、その「○○サービス一覧」という見出しに「h1」要素を使用することになる。さらにその一覧からリンクされている個別のサービスのページでは、サービス名やサービス名を含む見出しに「h1」要素を使用するのが、適切な使い方である。

図1
図1 [画像のクリックで拡大表示]

 クローラーは、「h1」があると、その内容が、その「ページ」でもっとも強調したいポイントだと認識してくれる。ただし、あくまでその「ページ」であって、「Webサイト」ではないことには注意したい。

metaタグのkeywordsとdescriptionに注意

 ヤマト運輸のWebサイトトップページでは、metaタグのkeywordsとdescriptionの記述が次のようになっていた。

<meta name="keywords" content="宅急便,クロネコヤマト,荷物問い合わせ,集荷,クロネコメール便,クール宅急便">

<meta name="description" content="クロネコヤマトで知られるヤマト運輸のサイト。宅急便、荷物のお問い合わせ、集荷受付など。">

 keywordsはよく絞り込まれていると言える。たくさんのサービスがある中で、ここまで限定した背景には苦労もあっただろう。ただ、もし多くの利用者が再配達を依頼する際にこのサイトを訪れるならば、「集荷」というキーワードに加えて「再配達」も入れておいた方が良いだろう。また企業名そのものもキーワードなので、少なくとも総合トップページのkeywordsには、「ヤマト運輸」も入れておいた方が良い。これももちろん、検索エンジンのクローラーが見ているから行うことである。

 descriptionは図2のように、検索結果ページ(=SERP:Search Engine Result Page)でタイトルの下に説明文(=Snippet)として表示されることが多く、利用者がSERPを見てサイトを訪れるかどうかを判断する材料になる、重要な部分である。現在のdescriptionは、簡潔に良くまとまっていると言えるのだが、「このサイトで、利用者は何ができるのか」という点に関する記述がやや不足している。SERPのSnippetの部分は、現状のものよりもう少し長い文章を表示することが可能なので、「利用者は何ができるのか」という部分を補足して、例えば、「クロネコヤマトで知られるヤマト運輸のサイト。宅急便、集荷受付、再配達依頼、荷物のお問い合わせ、運賃料金・配達日数を調べる、など。」とすると、更に分かりやすくなる。50文字程度が目安で、100文字以下を心がけたい。

図2
図2